内容説明
西ベルリンに潜入したKGBの情報員アレクセイは上官のサエキと共同生活を送るうち、美貌の内側に冷たい闇を抱えたサエキに惹かれ絶対の忠誠を誓う。サエキもまた、非情な世界に身を置いてなお人間らしさを失わないアレクセイに心を開くのだった。だが本国から下されたある指令が二人の関係に試練の影を落とす。書き下ろしを大幅に加えた完全文庫化。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
カナン
39
国を裏切って死ぬか、心を殺して体だけ生きるか。西も東も関係ない。私の場所じゃない。何処に居たって、全て自分の国ではなくなったのだから。夢の千年王国は憐れな姿を晒しながら崩れ落ち、数多の人間の日々を押し潰しながら破滅していった。壁が砕け、ソ連が息絶え、そしてロシアが誕生するまであと少し。だから今だけは貴方が犯した無数の罪も、私が負った無残な傷も、淡く発光する桜の海で静かな夢を見ていてほしい。夜天に孤独に浮かんだ赤いアルファルド。あれは貴方の魂、私の心臓。極東の夜では孤独な星すらも、桜の祝福を受けるのだから。2021/01/24
このん
27
(2014年3月6日3624)お互いに無くてはならない存在になったサエキとアレクセイ。アフガニスタンで事故に遭ったアレクセイを探す為にスパイの仕事を辞めたサエキ。元気にしているアレクセイを探しだし英国の保護下で本名を名乗りジャーナリストとして生きていく2人。最後のサエキの生まれた日本で桜を見ていた2人が印象的。ドイツの東西統一後に、サエキ達の長のルドルフ達がどうなったのかも気になる。。2014年の現在、ベルリンの壁が崩壊し平和への道を歩み始めて25年も過ぎた。でも、スパイは今も何処かに居る。2014/03/06
めめめ
20
桜について話すシーンは、暗鬱で重々しいトーンで綴られていた作品世界にふわっと明るい光が差すようだった。舞台はドイツからアフガニスタンへ。身分も何もかも明かしてアレクセイを探すサエキのなりふり構わない感が胸を打った。「読み終わったわぁ~…」と手応えを感じられる重厚な一冊でした。2017/04/10
きょん
20
後半確かに駆け足で、ちょっと上手く行き過ぎな感はあるけど、とりあえず再会できて良かった良かった。諜報部にいた人が、このお話の様に普通人として生きていくことはおそらく出来ないんだろうけど、桜のシーンは思わず涙でした。やっぱり平和って大事だね。2014/05/03
ミル婆
17
お互いが唯一無二の存在だというのがあまり深く語られないままの別離なので、今一歩萌えや切なさ不足だったが、終盤にきて急にドラマティックに。随所に出張っていた脇キャラがフェイドアウトしてしまったのは少々残念。繊細で冷静なサエキがアレクセイ絡みではなりふり構わないのは可愛いが、どこでも生きていけそうなアレクセイのおとぼけ流され具合といい、スパイやめれてよかった…。2014/03/18