内容説明
一九八〇年代。英国の偽造パスポートを持って西ベルリンに潜入したKGBの若き情報員アレクセイは、怜悧で冷たい美しさを湛えた上官のサエキと生活を共にしながら本国の指令を待つことに。しかしアレクセイには、サエキにも言えない極秘の任務が課せられていた。旧体制時代のドイツを舞台に繰り広げられるドラマティック・ロマンス、完全文庫化。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
カナン
41
「苦しむなアーシャ。あんな国のために」。冷戦末期の独ソ。KGBの諜報員としてベルリンに潜入したアレクセイと日本人の血が流れる謎多き上官サエキ。東西を隔てる鉄のカーテンがまだあった時代。現実を前に揺らぐイデオロギー、孤独と疑念、焦燥と諦念。殺すか、殺されるか、死ぬか消えるか。歴史の教科書に載るそれらは、しかし昔と云うには真新し過ぎるつい昨日の話だ。光を求めるように手を伸ばし合った二人の全く形の異なる覚悟に胸が痛む。腐敗し尽くしたソ連の終わりを、その消滅を、それでも恐れるアーシャの故郷への想いは愚かではない→2020/09/26
このん
28
(2014年3月5日3623)読み進めるのに時間がかかりました。崩壊する前の旧ソ連と東西を分断していたベルリンの壁が、この世界では生きています。ソ連から諜報員として西ドイツに派遣されたアレクセイと西ドイツでアレクセイを指導する立場のサエキ。サエキは香港に居た時に『東方美人』オリエンタルビューティと呼ばれる程のイケメン。アレクセイは人当たりも良く人間的に良い人だが自分の名前を捨て違う人物として生きる事になる。周りの誰を信じて良いのか分からない、誰もがスパイではないかと思える世界は精神力の強い人でないと無理。2014/03/05
きょん
20
ベルリンの描写に今まで読んだ東西冷戦時代の小説を色々思い出してしまった。スパイという職業のやるせなさと、旧ソビエトの非情さがひしひしと感じられ、二人の明るい未来が見えてこない・・・、早く次行こう。2014/05/03
きのこ
19
お借り本。感想はまとめて2巻で。2015/09/19
ミル婆
17
まだ壁があった頃のベルリンが舞台で、KGBの情報員が主人公なんて「エロイカより愛をこめて」みたいだとニヤけてたら、すんごくシリアスだった。しかも、今このご時世にもあんまり変わってないように思えるおそロシアや共産圏の社会情勢の描写の分量が多いよ〜。こういうお堅い話も嫌いじゃないんだが、萌えは次巻にあると期待して…。2014/03/18