内容説明
香港からの転校生・一束は、日本にも教室にもなじめずに立入禁止の旧校舎でまどろんでばかりいる。そんな一束だけの世界を破ったのが、二つ先輩の圭輔だった。まっすぐな圭輔にやがて心を許し、どうしようもなく惹かれていったのに、向けられる想いを拒んでしまった一束―十三年後、新聞社香港支局長になった圭輔と仕事相手として再会し…。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
扉のこちら側
133
初読。灰色の日本と、対照的な香港の天然色の描写が綺麗。美蘭のキャラクターがなければ動かなかっただろう、13年を経た関係がよかった。2011/08/27
JUN+
101
心理描写だけでなく情景の描写もすごく丁寧で、その場にいるような臨場感があった。なおかつ共感できる想いが随所に散りばめられ、自分の古い日記を読み返しているような錯覚さえ覚えた。初恋から13年、高校時代から30歳前後。お話自体に新しさはなくても、フォトフレームの裏に挟んだ大切な人のメモ書きとか、そういう部分でじわっとくる。そして先輩と佐伯、二人がそれぞれ嫉妬する場面がすごくリアルだ。初々しさを残す一束や穏やかな先輩も良かったけど、佐伯みたいな男も一緒に仕事したくなる魅力があって個人的にはけっこう好きだ。2014/11/21
ふかborn
52
☆大人のラブアフェアがお得意の作者にしては珍しく高校生同士の恋愛かと勘違い。本文中に香港返還前と書いてあるのに、過去の事だと全然気付かなかった。だからか、快活で水泳部の弓削先輩は苦い初恋の思い出としてここで終わりかと思い、現代の香港に移っても佐伯氏と一束の関係が素敵過ぎて、当て馬だと思っていた。ごめん。しかし、佐伯氏の人物背景が絶品。子供の頃に闘病生活をしていて外の世界に対して飢餓感溢れ、妻帯者でありながら海外赴任中に男の愛人と関係を築くとは、ときめかずにいられようか…という訳で間髪入れずに佐伯氏スピンへ2015/08/07
合縁奇縁
48
高校時代、大好きで仕方なかった先輩からの想いを拒んでしまった一束。十三年後、仕事仲間として香港で再会して…。心理描写とても上手いし、風景の描写なんかパッとイメージ出来そうなくらい事細かく書かれている。廃校舎の中や香港の街並み。高校時代にすれ違っていた2人がようやく大人になって結ばれて良かった。ただくっつくのがちょっと唐突過ぎたいのでは?あと、今回は翻訳有りの広東語も混ざっているので、ちょっと読みにくかったかな。「1997」の最後のオチが良かった。返還年じゃなくて、水泳の記録ですか…。
マッコリ
45
再会モノ。学生時代も大人になってからも描写が丁寧で楽しめました。一束の体温の低さというかなんとなくふわーっと浮いているような感じが印象的。数年前、香港に住んでる友人に案内してもらったことがあるので読みながら香港の熱気、湿気、ネオンや喧騒を思いだした。【D】2011/08/21