内容説明
プロジェクトリーダーとして新薬開発を率いていた葛岡哲也は、開発最終段階で浮上した副作用の懸念から、左遷を言い渡される。その夜自暴自棄になり泥酔した哲也が目を覚ますと、そこは自分が生まれる前の故郷・高知の沈下橋だった。そこで出産後まもなく命を落としたはずの母と再会し、彼女を救うため現代医療で病を治そうと奔走する。一方、現代では、競合チームが開発した新薬が、不正を隠して強引に上市されようとしていることを疑い、仲間とともに悪事を暴こうとするが―。
著者等紹介
金原信彦[カネハラノブヒコ]
1957年東京生まれ。明治大学卒業。製薬会社でMR(医薬情報担当者)、学術企画部門、法務・コンプライアンス部門などの業務に携わる(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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hiace9000
109
医療-製薬関連のミステリーサスペンス。この界隈に新たな手法で迫り、社会悪にメスを入れようと試みた作品。祖父の代から医師をしてきた葛岡家の数奇な運命と、その道からあえて外れ新薬開発を志した哲也が思わぬ左遷によって会社が秘したる闇と遭遇することになる―という物語。哲也の見る不思議な夢を伏線としつつ、荒唐無稽な仕掛けを違和感を最小限に抑えて嵌めこむ。地域医療に生きる町医者の姿をタイトルとうまく絡めて落としどころを設けた小気味よいリズム感は、解説を要する著者の専門分野を高いリーダビリティをもって読ませてしまう。2025/05/08
いつでも母さん
97
タイムスリープものは実は苦手。だがしかし、そこが気にならないほど読ませてくれた初読み作家さん。新薬開発の闇・・一発で効く薬があったらなんて、コロナ禍を経て老若男女問わず感じているよね。ましてや今現在、病と闘っている方や認知症と向き合ってる方々は尚更。日本の製薬会社は大小幾つあるのか知らないし、新薬認可の仕組みも知る由もない私だが、多くは正しい研究開発をしていると信じているし、医療従事者だって私利私欲とは無縁だと信じたい。「まっとうに」この言葉はいつも心の真ん中に置きたい。そんな読後感の本作、面白かった。2025/06/16
ガブリエル
5
仁淀川流域の自然と沈下橋の美しい光景が目に浮かぶ描写が心地よい。そこからの突然のタイムリープには面食らったが、主人公の祖父や父の医師としての姿、家族の愛情に心和む。家族や友人たちがあまりにもあっさりタイムリープを信じるところとか、タイムリープものにありがちな世界線の解釈など複雑なところもあったものの、後半でミステリに転じてからはスピード感が増して目が離せなくなった。驚いたのはこれが実際に起きた事案を下敷きにしていること。こんなことしてるから医療費が不足するんだよな〜。医療行政の闇は深い。2025/06/08
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