出版社内容情報
付き合っていた彼女に振られた社会人一年生、どこにも居場所がないいじめられっ子、いつも謝ってばかりの頼りない上司……。でも、いま見えていることだけが世界の全てじゃない。知らないうちに誰かを助けていたり、誰かに助けられたり。残業中のオフィスで、事故現場で、フェス会場で、奇跡は起きる。優しさと驚きに満ちた現代版おとぎ話。
【目次】
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
あや
43
福島県・猪苗代湖畔で行われる音楽とアートのフェスティバル、第一回「オハラ☆ブレイク」のために書き下ろされた短編がそもそもの出発点であったという作品。 最初は単行本の方で読み、この度文庫本が発売されたのでこちらで再読。そうそう、こんな話だったなと思い出しながら読了。数時間で一気に読み終えたからか、初めて読んだ時よりも物語を楽しめた。 2025/08/10
piro
34
猪苗代湖で開催されたフェスのために毎年1編ずつ書かれた連作。二つの世界の出来事が見えない所で繋がって進んで行く、伊坂さん的御伽話。どちらかと言うと低刺激で、ドキドキ感や「うわーっ!」と言う驚きの展開は無い。でもスパイと言う特殊な人たちの「活躍」や、多くの奇跡が重なって思わぬ方向に展開するストーリーにいつの間にか引き寄せられていました。そして最後には小さな幸福感を得られる所が嬉しい。松嶋くんと天野さん、二人の間の空気感がまた伊坂さんの作品らしくて愉しいなぁ。2025/08/11
F
18
構成の仕方が今までと異なる気もしましたが、伊坂さんらしいと言えばらしい構成でもあり、、あとがきを読んで納得。どう展開していくのかとワクワクしながら読みました。過去の伊坂作品の要素も取り入れつつ進んでいき、読んでいて飽きません。普通の会社員とエージェントの少年、違う世界が少しずつ交わっていく技術が流石伊坂さん。7年かけて作られている作品なのに伏線が次々と回収されていくのも流石ですし、気持ち良かったです。各エピソードがどれもスッキリした終わりで良かったです。門倉課長が好き。見知らぬ誰かの幸せを願う、素敵です。2025/08/15
混沌工房
18
グライダーみたい、という理由で振られた青年が就職し、なんとか一人前になる。いじめっ子から逃げた少年がスパイにスカウトされ、大冒険を繰り広げる。まったく違うようでいて、実はつながっている世界。どこか穏やかでほんわかした雰囲気がただよう理由は、この物語が音楽フェスのリーフレットに掲載された連作短編だからだろうか。のんびり優しい気分に浸って、読了。2025/08/15
lily
13
猪苗代湖の湖畔で行われる音楽フェスに着想を得て作られた連作短編集(小説の中にもフェスに出演するバンドの歌詞がたくさんちりばめられている)。小人のスパイと平凡な会社員の人生が交錯するが、スパイは扉を行き来し大きくなったり小さくなったりとまるで不思議の国のアリスのよう。伊坂節は控えめだがほっこり読了。「時間と人の気持ちはどうにもならないんですよね。でも、それ以外は、どうにでもなりますよ。」2025/08/18