出版社内容情報
口がまわらず、誰にも言葉が届かない。歩いた後には尿を引きずった跡が残るため、まいまいつぶろと呼ばれ、蔑まれた第九代将軍・徳川家重。常に側に控えるのは、ただ一人、彼の言葉を解する何の後ろ盾もない小姓・兵庫だった。「もう一度生まれても、私はこの身体でよい。そなたに会えるのならば」――。二人の絆を描く、落涙必至の傑作歴史小説。
内容説明
口がまわらず、誰にも言葉が届かない。歩いた後には尿を引きずった跡が残るため、まいまいつぶろと呼ばれ、蔑まれた第九代将軍・徳川家重。常に側に控えるのは、ただ一人、彼の言葉を解する何の後ろ盾もない小姓・兵庫だった。「もう一度生まれても、私はこの身体でよい。そなたに会えるのならば」―。二人の絆を描く、落涙必至の傑作歴史小説。第170回直木賞候補作。第13回本屋が選ぶ時代小説大賞受賞。第12回日本歴史時代作家協会賞作品賞受賞。
著者等紹介
村木嵐[ムラキラン]
1967年京都市生まれ。会社勤務等を経て、司馬遼太郎氏の夫人である福田みどり氏の個人秘書を十九年間務める。2010年『マルガリータ』で第十七回松本清張賞を受賞し、作家デビュー。2023年、本作『まいまいつぶろ』で第十三回本屋が選ぶ時代小説大賞、第十二回日本歴史時代作家協会賞作品賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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KAZOO
101
この作家さんは初めてですが、この本は単行本で気になっていたのですが最近文庫なったので手に取ってみました。徳川吉宗の長男がコミュニケーションに障害があるものの、それを理解する人物が出てきます。この二人を中心として将軍になるまでをうまく周りの人物を交えて読ませてくれます。私はこの人物を田沼意次だとばかり思っていたのですが違っていたのですね。ほろりとさせてくれます。2025/06/19
けやき
36
生まれながらに言語に障害がある9代徳川将軍家重とそれを唯一理解できた大岡忠光の主従の物語。心温まるお話でした。2025/06/24
エドワード
22
徳川吉宗の長男・徳川家重は言語不明瞭かつ襁褓を常用、九代将軍の座が危ぶまれていた。徳川家康が定めた長幼の序の家訓の手前、幕閣は揺れていた。そこへ、家重の言葉を解する小姓の大岡兵庫(忠光)が現れる。家重と兵庫、正室・比宮の間の魂の交流が描かれ、家重の澄んだ瞳、誠実な心が胸を打つ。家重の長男・家治の聡明さを鑑み、吉宗は家重を九代将軍とする。だが家重の言葉を大岡忠光のみが伝えることは問題を孕む。実質的な側用人である。家重が将軍職を全うし家治が将軍に就いた時、田沼意次が老中となる。「べらぼう」の時代の始まりだ。2025/07/15
ゆき
8
徳川吉宗の息子の話。まいまいつぶろの意味が分からなかったので、知れて良かったです。長男を時代の将軍にするかさぞ悩んだでしょうね。 口も聞けず、文字も充分に書けず……今の世のように医療が整っていないので、吉宗の息子として生まれていなければ、捨てられていた可能性もあり。飢饉が多かったですから。 2025/06/21
もっぱら有隣堂と啓文堂
7
直木賞候補になるあたりから気になっていた作品で文庫化されたので読んでみた。帯曰く「傑作歴史小説 落涙必至」だが、前段には同意、後段は人によるかなと。自分は泣くまでには至らなかったので。総体としてはとても優しい作品で、史実では家重は嫡男家治の生母である側室お幸の方を幽閉し不和になったともされるがそのあたりには触れず、唯一家重の言葉を解した大岡忠光と二人三脚で生涯の苦難を乗り越えていく物語なので気分が落ちた時に読んでも効能があるのではないだろうか。こんなご時世、さらっと享保の改革をおさらいできるのも地味な利点2025/07/16