出版社内容情報
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内容説明
父親が猟奇殺人を犯し「悪魔の子」と噂される少年、良世。事故で娘を失った過去を持つ翔子は、亡くなった姉の忘れ形見である良世を育てることになるが、口を閉ざし、何を考えているかもわからない。なんとか彼を知ろうと寄り添うも、ある日机で蟻の「作業」をしている姿を目撃し―。人を信じ育てることの難しさと尊さを描く、感涙のミステリ。
著者等紹介
小林由香[コバヤシユカ]
1976年長野県生まれ。2006年伊参スタジオ映画祭シナリオ大賞で審査員奨励賞、スタッフ賞を受賞。08年第一回富士山・河口湖映画祭シナリオコンクールで審査委員長賞を受賞。11年「ジャッジメント」で第三十三回小説推理新人賞を受賞。16年「サイレン」が第六十九回日本推理作家協会賞短編部門の候補作に選ばれ、連作短編集『ジャッジメント』でデビュー(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
カブ
38
殺人犯の父を持つ良世は小学生4年生。姉の忘れ形見の良世を引き取り、育てることとなった翔子は良世と同じ年の自分の子を幼くして事故で無くしている。重いテーマの作品だが、日々の生活の中に家族らしい関係も垣間見ることができる。信じることの難しさ、大切さを感じた。2023/11/01
なつくさ
35
初読みの作家さん。その日「悪魔の子」と呼ばれた少年は泣いた。獣のような鳴き声で……。姉の子であり、殺人犯の子でもある良世を預かることになった翔子。良世の言動に背筋がぞくりとした。だが、良世が抱えているもの、戦っているものを知るにつれ、背筋のぞくりは形を変えていく。いつだって、安全地帯にいる人は無意味で無秩序な爆弾を投下していく。意地悪な弾丸を隠し持って撃つ相手を探している。でも、そんな悲観的な世界でほんの小さな出会いが大きな希望になることだってあるのだ。どうか、良き世を生きられますように。2023/11/11
akiᵕ̈
29
母親は自分を産んですぐに亡くなり、父親は猟奇殺人犯として逮捕された息子の良世を、母の妹である翔子が養子縁組をして育てることになり、二人の間に起きてきた様々な辛い過去を見つめていく。自分のせいで亡くなったという母親への想いや、被虐待児だった父親の常軌を逸した行動によって苦しんできた良世。その心に寄り添う翔子。人との出会い、発する言葉の重さなどの大切さも投げかけながら、寄り添ってくれる人、分かろうとしてくれる人がいるだけで救われる大切さが身に沁みる。この二人ならきっと大丈夫。2025/04/19
おくしょー
7
小林由香さん3冊目。 新潟で起きた悍ましい猟奇殺人。逮捕されたのは姉の夫だった…。殺人犯の子でもあり、出産で亡くなった姉の忘れ形見でもある、息子の良世を引き取ることになった翔子。翔子自身、事故で娘を喪った痛みを抱えながら生きていて、始めは腫れ物に触るように良世と接していたが… 翔子が娘を亡くした経緯がもう辛くて😭 そして良世の抱えていたものが苦し過ぎて…😔 小学校高学年の多感な時期に辛かったね。人は誰しも善悪両面持っていて、出会う人や環境で運命は変わっていく。どうか彼が良き世を生きていけますように。2023/11/12
やまた
5
猟奇的な事件の犯人は義兄だった。姉が亡くなっているので、その息子である良世を引き取るが、その子のことが信じきれない…。いかにもな猟奇的な絵を描くとか、仲良しのはずの親子が実はいじめの首謀者、とか、、なんとなく都合のいい感じでどんでん返し感を設定しているように感じてしまった。でもすらすら読めた。2024/03/20