内容説明
タワーマンションが建ち、人口が急増する街で古くから続く花屋を営む桜子。十七歳の娘が市民結束のために企画されたミュージカルの演者に選ばれた。新旧の住民が入り交じって盛り上がる街。だが若い女性が続けて殺される事件が起きる。不穏な空気のなか、今度は娘が何者かに誘拐されて…。あまりにも切ないラストに、慟哭必至の傑作長編小説!
著者等紹介
宇佐美まこと[ウサミマコト]
1957年、愛媛県生まれ。2006年に「るんびにの子供」で第一回「幽」怪談文学賞短編部門を受賞しデビュー。17年、「愚者の毒」で第七十回日本推理作家協会賞長編及び連作短編集部門受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
starbro
231
宇佐美 まことは、新作中心に読んでいる作家です。図書館の新刊コーナーで未読の新刊文庫を見つけたので、読みました。本書は、武蔵小杉を彷彿とさせるような街での、母息子愛憎ミステリ、盛り込み過ぎ感はありますが、これはこれで読み応えがあります。2021/01/26
アッシュ姉
85
解説によると『ダ・ヴィンチ』のインタビューで「ミステリーを対象とする大変な賞をいただいたからには、やはり一度は謎解き要素がしっかりある作品を書いておかなければ、と思いまして(笑)」と語っていたそう。これまでと雰囲気が違うのはそういう理由だったのか。あやしい人はわかりやすいけど、様々な点がどう結びつくのか見当もつかなかったので、すべて繋がる終盤の展開は流石。伏線回収は見事だが、ハトがちょっと。次は宇佐美さんらしさ全開の作品を期待したい。2021/04/13
itica
81
たとえどんな理由があるにせよ、殺人に正当性などない。人を殺めることを肯定してはならない。けれど、と思ってしまう。子供には気まぐれな愛情しか与えず、奔放に生きる母に罪はないのだろうか。人知れず罪を犯して何食わぬ顔をした悪魔のようなヤツを許しても良いのだろうか。昔からの古い街並みと、急速に発展した高いビル群が混在する街で起こった、連続殺人事件と女子高生拉致事件は恐ろしく感じる反面、哀しいストーリーでもあった。前向きに強く生きようとする少女の存在が救いではあったけれど。 2021/10/26
オーウェン
59
多摩川市で起きる連続殺人。 その死体の側には必ず一つの花が置かれていた。 この謎を花屋の娘菫子は刑事の純と共に解決していく。 強烈な描写の作品が多かったここ最近の宇佐美さんだが、幾分和らいだ印象の作品。 だが仕掛けや伏線が多く、章の冒頭で食事シーンと殺害シーンを提示ておく。 そこから犯人らしき可能性のある人物が何人か。 だが犯人はかなり意外な人選であり、精緻に組み立てられた花の意味にしっかりと納得させられる。2023/02/05
akiᵕ̈
54
夫を亡くし2人で経営していた花屋を切り盛りし、娘・菫子と暮らす桜子。多摩川市が新興地区に住む人たちの結束を高めるために市民ミュージカルの制作に乗り出し、菫子が抜擢される。ミュージカルのタイトルこそが「聖者が街にやってきた」。そこに関わる演出家、音楽監督、食、花を上手く絡ませながら、次々と起こる殺人事件の闇が明かされていく。前向きに生きている人もいれば、心に傷や闇を持つ人たちもいる。そんな対照的な人間臭さを描いた二時間サスペンス的な感じ。第二章のどうまん蟹の話は地元の中々レアなお話をついてきていて楽しめた!2021/12/28
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