出版社内容情報
後ほど
内容説明
大手居酒屋チェーン「山背」に就職し、張り切っていたはずの健介が、命を絶った。異変に気づけなかった恋人の千秋は自分を責め、悲しみにくれながらも、彼の両親と協力し、健介の名誉を取り戻すべく大企業を相手に闘いを挑む。しかし「山背」側は、証拠隠滅を図ろうとするなど、卑劣極まりない―。小さな人間が闘う姿に胸が熱くなる感動長篇。
著者等紹介
村山由佳[ムラヤマユカ]
1964年東京都生まれ。立教大学文学部卒業。93年『天使の卵 エンジェルス・エッグ』で第六回小説すばる新人賞を受賞。2003年『星々の舟』で第一二九回直木賞受賞。09年『ダブル・ファンタジー』で第二二回柴田錬三郎賞、第一六回島清恋愛文学賞、第四回中央公論文芸賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ミカママ
480
表紙から勝手に村山さんの白系の恋愛小説かと思いきや、次々と健介の職場で立ち込めてくる暗雲に胸が詰まる。すっかり主人公・千秋になりきって、わたしだったらどう声がけしていたか、どう行動していたか。彼女の強さと頭の良さが際立った作品だった。2021/01/13
三代目 びあだいまおう
265
殺人的労働時間などで精神も肉体もボロボロになった若き店長が命を絶った。彼の苦しみをわかっていたのに、心配から出た言葉が彼を追い込んだのではと苦しむ恋人。ブラック企業の筆頭と言われた大手居酒屋チェーンの実話がベースだがこんなに酷かったのか。人を人とも思っていないクソ管理職、責任から逃れることしか考えない無能な阿呆ども!前半の、支え合い信頼し合うピュアな2人の幸せが美しい分、込み上げる怒りが私の奥歯を削らせる!長く辛くとも諦めない遺族の闘いは、やがて西からの爽やかな風に少しだけ報われたのか。管理職必読‼️🙇2020/11/28
さてさて
164
『風が吹いている。西からの風だ』という結末に亡き健介のことを思う千秋。『人間誰しも、ろくに眠らず疲労が限界に達すると、ごく当たり前の正常な判断もできなくなる』というその先に訪れた哀しい結末を意味あるものとするために立ち上がる千秋の闘いの日々は、巨大企業に巣食う根深い問題の数々を浮き彫りにしてくれました。このようなことが二度と繰り返されないで欲しい、二度と繰り返してはいけない、そして二度と繰り返させてはいけない、本を閉じて、そんな思いに心がいっぱいに満たされた、激しく心揺さぶられる壮絶極まりない作品でした。2021/10/16
じいじ
100
これは面白いサスペンスお仕事小説です。これまでの村山小説では味わえない感触の小説で新鮮味を感じます。爽やかな千秋と健介の恋人同士の青春小説を思わせる序盤から、健介の突然死を境に物語は様相を一変。最愛の人を喪って、気丈に突き進む千秋に、女のやさしさと頼もしさを感じます。立ち向かう喧嘩の相手は、断固会社の非を認めない、健介が勤めていた居酒屋チェーン(上場企業)。一筋縄ではいかないブラック企業相手に孤軍奮闘の戦いを挑みます。勧善懲悪に収まる最後は何とも小気味がよかった。新しい村山さん発見の一冊です。2020/10/05
ma-bo
98
表紙と題名からは想像つかなかったのだけれど、カリスマ経営者がいるブラック企業の過労自殺と企業と闘う遺族の話。居酒屋チェーンなのでモデルになってる会社は想像つくな。「健やかでまっとうな心を持った人間を自殺にまで追いやってしまう、そんな会社のやり方がどれだけ異常かということなのだ。その内情を明らかにして、世の中にも真実を知ってもらわなくては、闘う意味がない。」2023/08/01