内容説明
自ら産んだ子を「取り替え」た、繭子。発覚に怯えながらも、息子・航太への愛情が深まる。一方、郁絵は「取り替えられた」子と知らず、息子・璃空を愛情深く育ててきた。それぞれの子が四歳を過ぎた頃、「取り違え」が発覚。元に戻すことを拒む郁絵、沈黙を続ける繭子、そして一心に「母」を慕う幼子たち。切なすぎる「事件」の、慟哭の結末は…。
著者等紹介
芦沢央[アシザワヨウ]
1984年東京都生まれ。2012年『罪の余白』で第三回野性時代フロンティア文学賞を受賞しデビュー。18年『火のないところに煙は』で第七回静岡書店大賞受賞、19年、同作が本屋大賞九位となる(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
1 ~ 1件/全1件
- 評価
-
TERU’S本棚
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
さてさて
184
まさかの新生児『取り替え』という俄に信じがたい事態が起こってしまった先の二つの家族のその後を描くこの作品。そこには、対象的な母親に育てられた二人の子どもたちの気持ちに感じ入りもする物語が描かれていました。育児の大変さを改めて思うこの作品。そんな物語の中に親と子の繋がりを改めて考えさせてもくれるこの作品。読後、二人の子どもたちの未来にいつまでも思いを馳せてしまう、なんとも言い表せない思いが渦巻くその結末含め、小説を読むことでこんなにも感情が揺さぶられてしまうものなのか!と驚いてもしまう素晴らしい作品でした。2025/07/10
イアン
144
★★★★★★★★☆☆タイトルが切ない芦沢央の長編。産後の不安から衝動的に自らの子を取り替えてしまった繭子と、その事実に気付かず育児を続ける郁絵。4年後、あるきっかけで入れ替わりの事実が判明する。第一章ではいつ発覚するかと怯えながら過ごす繭子の、第二章では取り違えの事実に当惑し重大な選択に悩む郁絵の心理を繊細な筆致で描いた良作。期待したようなミステリ要素はなかったが、ここまで心揺さぶられる作品は稀だ。繭子の行為は許されるべきものではないが、それでも置き去りにせず掬い上げるような結末を心のどこかで望んでいた。2024/09/19
馨
135
長編ですがあっという間に読み終わりました。同じ日に子供を出産した繭子と郁絵。繭子が故意に郁絵の子供と自分の子供のネームタグを付け替え、取違えたまま数年経過し取違えが発覚する。最初は繭子が主演、途中から郁絵に変わり最後まで郁絵目線。私的には繭子がどれだけあの結末に至るまでに苦しんだかが知りたかったです。可哀想すぎるのは2人の子供。こうちゃんとりくは大きくなって事実を理解したらどうなるのだろう。2021/01/01
ゴンゾウ@新潮部
105
芦沢さんの作品なので期待していたのだが、残念でした。何故繭子は自分の子供を入れ替えたのか。最後まで釈然としなかった。結末も何かあるのかと期待していたが。2021/12/03
ふじさん
102
読み始めから、読み終わるまで心のざわつきが収まらなかった。自ら産んだ子を取り替えた繭子。この事実を告白出来ずに苦しむ繭子、遂に取り替えの真実が明らかになる時が来る。元に戻すかそのままか悩む郁絵、沈黙を守る繭子、そして一心に母を慕う幼子たち。切なすぎる事件の慟哭の結末は悲しく切ない。繭子のその後の人生は、幼子のその後は。考えると心が暗くなる。 2021/07/23
-
- 和書
- 第三の時効 集英社文庫