内容説明
災害によって人生が一変し、それでも「希望」を捨てなかった人がいる。借金を返済しながら新しい漁業の道を模索する石巻の漁師。原発事故による避難指示が解除された南相馬市にデイサービスをつくった介護士。ボランティアとしてやってきた石巻に移住して自分の店を開いた料理人…。一年間、全国を横断して取材をつづけた、被災地の素顔。渾身のルポルタージュ。
目次
そしてまた、あの日が巡り来る
わが同世代のリーダーたち
シンボルの底力
この町は「ふるさと」になるか?
ラグビーの街、「世界」と出会う
つながりの言葉をアップデートせよ
ここにもまた「被災地」が…
オレ、想像力、足りなかった
台風一過のあと
あの冬、凍えた校舎で
「青」と「黒」の時代
小さな浜の希望
著者等紹介
重松清[シゲマツキヨシ]
1963年岡山県生まれ。早稲田大学教育学部卒業。出版社勤務を経て執筆活動に入る。91年『ビフォア・ラン』でデビュー。99年「ナイフ」で坪田譲治文学賞、「エイジ」で山本周五郎賞、2001年「ビタミンF」で直木賞、10年「十字架」で吉川英治文学賞、14年「ゼツメツ少年」で毎日出版文化賞を受賞。ライターとしてルポやエッセイも多く手掛けている(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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starbro
173
重松 清は、永年に渡って新作をコンスタントに読んでいる作家です。東日本大震災発生時の『希望の地図』から7年後のルポルタージュ、日増しに風化してゆく災害をこうした形で発信するのが、作家・メディアの務めだと思います。確かに災害は自然の猛威でやむを得ない部分も多いですが、人災の部分もかなりあります。スウェーデン人の16歳の環境活動家の涙ながらの訴えを世界一の権力者トランプ大統領がちゃかしている様では、地球に未来はありません。 https://www.youtube.com/watch?v=_y8JNG7S0bo2019/09/25
アキ
73
2011年東日本大震災から7年経ち、その後も多くの地域で自然災害があり、被災地は、そしてそこに住む人々はどうしているのか。折に触れて東北を訪れ、地域ラジオのDJもする程思い入れのある土地になった著者から見た現実と希望。ふるさとと復興がキーワードとなり今も苦しむ人々、むしろ前向きにコミュニティを作ろうとする若者、昔ながらの醸造を守り抜く酒造など、ひと言でいうと「それぞれ」。著者ならではの石巻市蛤浜のカフェの亀山さんの話しと阪神淡路大震災後に教師となった中嶋さんと滝沢さんの交流は受け継いでいく人たちのいい話し2019/09/08
saga
69
小説『希望の地図』から7年。本作は、主として日本列島で発生した災害被災地のルポである。自分も、阪神淡路、東日本と「大震災」と名付けられた災害を、同時代を生きる一人として経験する生き証人になった。明治生まれの祖母は関東大震災を経験していた。昭和生まれの自分は、現実感を伴わなずに彼女の話を聞いていたことを思い出す。平成の30年間は災害の時代だったと、改めて思う。中でも福島原発が原因の放射能汚染は、人々の生活に今なお悪影響を及ぼしている。災害からの復興に、若い世代が立ち上がってくれている、そこに希望がある!2021/05/17
カブ
50
あれから9年、今年も祈りの日がやってきた。この日に東日本大震災関連の書物を読むのがいいのかどうかはわからないけど、忘れてはいけないことだと思うから心にきざむ。災害の多い平成だったけど、令和になってもそれは続くのか?!地球が悲鳴をあげているかのようだ。それでも、生きていくんだな。2020/03/11
piro
34
東日本大震災をはじめとして、平成の日本を襲った様々な自然災害からの復興に取り組む人々のルポルタージュ。テレビや新聞は災害直後のセンセーショナルな事実は伝えるものの人々の「その後」の生活はあまり伝えてくれません。この本はそんな人々の、その後の生活・人生を伝えてくれています。これでもほんの一部なのでしょうが、重松さんの真摯で誠実なスタンスが伝わる一冊でした。報道されない被災地の生活を「想像する」こと。私達はせめてこの事だけでも心掛けなければいけませんね。明日、自分自身が被災者になるかもしれないですし…。2019/10/06