内容説明
2次予選での課題曲「春と修羅」。この現代曲をどう弾くかが3次予選に進めるか否かの分かれ道だった。マサルの演奏は素晴らしかった。が、明石は自分の「春と修羅」に自信を持ち、勝算を感じていた…。12人が残る3次(リサイタル形式)、6人しか選ばれない本選(オーケストラとの協奏曲)に勝ち進むのは誰か。そして優勝を手にするのは―。
著者等紹介
恩田陸[オンダリク]
1964年宮城県生まれ。92年『六番目の小夜子』でデビュー。2005年「夜のピクニック」で吉川英治文学新人賞と本屋大賞、06年「ユージニア」で日本推理作家協会賞、07年「中庭の出来事」で山本周五郎賞、17年「蜜蜂と遠雷」で直木三十五賞と本屋大賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
南北
820
二次予選の後半から本選までが描かれています。上巻同様読んでいて楽しいと思える本です。連載に7年かかったそうですが、著者が苦心したとは感じられないほど一気に読むことができました。ピアノコンクールという日常とは異なる世界、そこに出場するだけでも膨大な時間を費やして練習してきた人がそれでも悩み、苦しんだりしながら演奏していくところは全く経験したことがないのに不思議と共感できました。映画化やアニメ化の話もあるようなので、今後とも楽しみな作品です。今度読むときは曲を聴きながらというのもいいかもしれません。2019/04/29
白いワンコ
625
主役は栄伝亜夜。七年(!)に渡る長い執筆期間、めくるめく逡巡の果てに辿り着いたプロットなのだろう。コンクールの結果がそれに深みを与えている。文章量として本選のコンチェルトをもっと読みたかった気はするが(第三次予選長くないか?)、オーケストラが大作を演奏するにも似た、その場限りの執筆の妙を楽しむべきなのかも。蛇足ですが、幻冬舎の見城徹社長に、以前ちょっとだけ誉められたこたがあるという個人的な自慢も付記しておきます 2019/04/26
青乃108号
588
下巻に入ってからは物凄かった。かつて経験したことのない体験だった。俺は只、本を読んでいるだけだったはずなのに、I'MAXとか4DXとか、いやそれ以上のアトラクションの直中に放り込まれた。音楽の洪水。溢れてくる、迫ってくる、巻き込まれる。恩田陸、凄い。小説はまだまだ無限の可能性を持っている。只の文字の羅列、文章の積み重ねなのに。それは作中の栄伝亜夜や風間塵の奏でる音楽がまさにそうであるように。彼等はこれから、どの様な音楽を奏でていくのだろう。そして小説は、これから俺にどの様な世界を見せてくれるのだろう。2024/10/27
エドワード
514
巡り合わせの不思議。亜夜とマサル、塵がこの同じ場所に居合わせている奇跡。そう、三人は出会うべくして出会った。お互いが、お互いの背中を押すために、コンクールはある。戦いではなく、若者の成長のために、ある。私はオーケストラが演奏を始める前の瞬間が好きだ。緊張感と期待感。文学と音楽、私の愛する芸術の幸福な結びつきが、ここにある。明石に菱沼賞受賞の連絡が来る場面では鳥肌が立った。解説の、直木賞受賞前の裏話は先日の「東京會舘とわたし」が脳裡をよぎり微笑みを誘う。「さあ、音楽を始めよう。」ここから未来が始まるのだ。2019/09/27
そる
513
下巻は演奏中のイメージ描写が長くてやや退屈。上巻の方がテンポ良かった。誰か落ちるだろう、と思ってたらやっぱり、でも賞をもらえたシーンは嬉しくて涙。あと、3人は仲良くなったのにそこだけ接点ないの?と思ったら亜夜が、あなたのピアノ好きです、と。そこもちゃんと聞いてたんだ!と嬉しい。3人は天才すぎてやや共感できないのが残念だがお互い高め合い、ハッピーで良かった!「あたしたちは、みんな音楽から与えられることばかり考えていて、返してこなかった。搾取するばっかりで、お礼をしてこなかった。そろそろ返してもいいわよね。」2020/02/06