内容説明
バリで精霊の存在を感じながら育ち、物の記憶を読み取る能力を持つさやかのもとに、ある日奇妙な手紙が届いた。「庭を掘らせていただけないでしょうか」。それは左手が動かなくなった悲惨な記憶をよみがえらせ…。愛娘の世話や義母との交流、バリ再訪により、さやかの心と体は次第に癒えていく。自然の力とバリの魅力に満ちた心あたたまる物語。
著者等紹介
よしもとばなな[ヨシモトバナナ]
1964年東京都生まれ。87年小説「キッチン」で第6回海燕新人文学賞を受賞しデビュー。89年『キッチン』『うたかた/サンクチュアリ』で第39回芸術選奨文部大臣新人賞、同年『TUGUMI』で第2回山本周五郎賞、95年『アムリタ』で第5回紫式部文学賞、2000年『不倫と南米』で第10回ドゥマゴ文学賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ちなぽむ and ぽむの助 @ 休止中
148
バリで育ったサイコメトリーの能力を持つさやかと、不思議な縁で繋がる周りの人たちの物語。初期〜中期?の頃の筆者の作品は本当に心に沁みたんだけど、最近の作品は私の共感の及ばないところに達観して行ってしまった感じがして少し寂しい。でも、この本に出てくるすべての人が優しくて、損得で生きている心の垢が少し落とされたような穏やかな気持ち。ばななさんは心の有り様をとても大切にしていると感じるけど、その心の為には健康な身体があって、健康な身体の為には小さくてもあたたかな環境や息吹く自然が大事、としみじみ感じさせてくれる。2018/08/14
masa@レビューお休み中
89
長くて単調で盛り上がりがない。あまりにも、いつものばななさんと違って読みにくかったので驚いてしまった。そうしたら、ちゃんとあとがきにそのことが書いてあって、敢えてそういう物語を書いたとあってホッとした。途中までは波もなく淡々と過ぎゆく日常と成長した主人公と元彼、亡くなった夫や元彼との過去の出来事などがゆるやかに描かれている。終盤にはバタバタ展開して面白くなるのだが…。おそらく、肝となるのは平坦な毎日の方なのだと思う。当たり前の日常がいかに大切なのか。いかに愛おしいものなのかを丁寧に描いた作品。2017/08/20
ぺんぎん
60
縁があって巡り会えたひとを大切に思うこと、その中での日常が続くことへの有難み。失って乗り越えた先にある強さと優しさ。沈むことなく静かに流れる中にも様々な感情になるストーリー。2022/11/25
優希
59
優しい時間が流れていました。精霊を感じつつ育ち、記憶を読む能力を持つさやか。日々届く手紙。愛娘、義母との交わり、パリへの再訪でさやかをあたたかく包んでいる時間なのだと思いました。癒されます。2021/05/26
ワニニ
58
終始、不思議な気分。ああだこうだ考えている日々の自分さえもが、何か大きなものに包まれて、解けていく感覚。バリでのダラダラ幸せな昼寝で見た夢みたいで、アジアっぽく詩的。ゆったり過ぎて、そろそろ何か起こるのだろうか?とついつい思ってしまう、自分のせっかちさが悲しい。生きていれば大変なこと、恐ろしいこと、悲しいこと…もたくさんあるのだけれど、そういうことのいちいちでなく、日常の生活を送れる平和、愛おしさに目を向けられる、おとぎ話のような物語。ぼんやりと、育つ、育てる、生きるに思いを巡らせた。七尾旅人の曲と共に。2017/09/20