内容説明
一九六〇年代から七〇年代にかけての、いわゆる「日本の外食業界」の青春時代に、人生を賭けて異国で修業を積んだ料理人たちがいる。奴隷労働のような量の手作業を何十年間もこなし市場を開拓し、グルメ大国日本の礎を築いた、ベテラン料理人たちの仕事論。
目次
「現地修業で失敗しても、何回でもやり直せばいい」―谷昇/フランス料理
「現地になじまなければ、文化の長所はわからない」―鮎田淳治/イタリア料理
「海外で学ぶ間、日本に手紙を送ることも重要だった」―佐竹弘/イタリア料理
「ほんとうのイタリア料理を、日本に定着させたくて」―吉川敏明/イタリア料理
「一箇所からの定点観測でわかることもある」―野崎洋光/日本料理
「病気が治って、働けるだけでもありがたかった」―塚越寛/寒天製造業・会長職
「フランスで知ったのは、土地と料理のつながりでした」―音羽和紀/フランス料理
「フランスでは、心から納得できる基準を見つけられた」―小峰敏宏/フランス料理
「疲労がたまって西麻布から軽井沢に移住を決めました」―田村良雄/フランス料理
「海外で感じたのは、信頼ってありがたいんだということ」―田代和久/フランス料理
著者等紹介
木村俊介[キムラシュンスケ]
1977年東京都生まれ。インタビュアー(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
メルル
18
「ホンモノ」は格好良いし憧れる。だが「ホンモノ」を目指すとキツイ。睡眠時間が少ないというよりは、ほとんど寝れない。それに貧乏。本場に行くと差別なんてものまである。これ、よっぽど好きじゃなきゃ耐えられないな。これに耐えた人の料理は、料理の腕前だけでなく愛情も詰まってるだろう。みんな、強い信念を持っている。料理人の苦労話は驚くことがたくさんだった。好きなことのためなら、苦労を惜しんではいけない。実りある読書になった。2017/09/19
ずぅ
10
有名料理人達の生い立ちから、仕事観にせまる短編集。家に帰る暇もないくらいどんなに忙しくても、「料理が好き」という気持ちでひたすら前に進んでいく姿は真似できないほどエネルギッシュ。でも休まないことが偉い、素晴らしい、当たり前、みたいな価値観はどうなのだろう。2019/06/24
高橋 (犬塚)裕道
6
星3.5。内容的にはベテラン料理人による若い料理人への心得、アドバイス、苦言等。読んで損はない、特に若い人。料理人である必要はない、どんな職業も根っ子は同じ様なものだ。勿論説教臭い所が少々はある。2017/07/18
Kazuo Tojo
4
おもに1950年代の前後に生まれた料理人の体験談を集めたもの。はじめにー現在、日本は、世界に冠たる「美食」と「漫画」の国である、などとも言われている。共通点は、「手作業が直にお客さんに感知され、高級とされるもの、また、人気のあるものほど手作業の機械化が進んでいない」といった興味深い面もあるが、ここで重ねて伝えておきたい要素は「とんでもない労働の分量」だ。10人の料理人のインタビューがまとめられたものを一人一人紡ぐゆうに読む。作者がいうように大変な仕事。そして今、コロナで大変だなと思う。2022/01/15
fujiokashinya
3
フランス料理やイタリア料理に魅せられ、旅人のように海を渡り、数十年も料理を作ることに邁進してきたベテラン料理人のインタビュー集です。それぞれの人生が染み付いた言葉は、決して洗練されているわけではありませんが、存在感を放ちます。苦労話ではなく、ひとりの人間の歴史が刻まれている、いわば痕跡のような言葉の集合です。業界も違えば経験の厚みも異なりますが、自分と同じ「仕事をする人」の思いに触れて、明日もまた仕事をしようと思いました。2017/04/17