内容説明
望まない職場で憂鬱な日々を送るOLの直美は、あるとき、親友の加奈子が夫・達郎から酷い暴力を受けていることを知った。その顔にドス黒い痣を見た直美は義憤に駆られ、達郎を排除する完全犯罪を夢想し始める。「いっそ、二人で殺そうか。あんたの旦那」。やがて計画は現実味を帯び、入念な準備とリハーサルの後、ついに決行の夜を迎えるが…。
著者等紹介
奥田英朗[オクダヒデオ]
1959年岐阜県生まれ。プランナー、コピーライター、構成作家などを経て、97年『ウランバーナの森』で作家デビュー。2002年『邪魔』で大藪春彦賞、04年『空中ブランコ』で直木賞、07年『家日和』で柴田錬三郎賞、09年『オリンピックの身代金』で吉川英治文学賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
馨
195
ドラマを見ていたので内容把握済みでの読了でしたがちょっとした設定等の違いはあれど、ドラマ同様ハラハラしてあっという間に終わりました。やっぱり完全犯罪って無理なのか。うまく事が進んだと思ってもどこかにほころびや抜けがあるものだなぁ。昨今は日本中監視カメラだらけなので逃げられないなあと実感しました。直美と加奈子のその後を想像して色々妄想が膨らみます。2020/01/22
ユザキ部長
165
カタカナの「ナオミ」と「カナコ」。例えば、ナオミは直美でも尚美でも。カナコは可奈子でも佳菜子でも。つまり誰にでも当てはまる事柄なんだろうと思った。殺人を排除と、さらにはその行動計画をクリアランス・プランと言い換えたのはその所以。考えの甘さとその綻びが読むスピードを緩ませない。そして。奥田さんらしい終わり方。面白かった。2017/06/21
sayan
136
文庫本は500ページを超え、手にとるとずっしりとする。が、内容は一切感じさせないスピード感ある展開で出張移動中に読み切った。本書のラストに残った強い既視感は、ベン・アフレック主演の映画「ARGO(アルゴ)」のラストシーンと思い出す。amazonで本書を「ナオミとカナコの祈りにも似た決断に、やがて読者も二人の〈共犯者〉になる。」とあったがその通り。スピード感ある展開を繰り広げる中でp.192の「自分の生存がかかっていると、日常の悩みなど悩みでなくなるのだ」という箇所は、非常に生々しくリアリティが強く残った。2018/04/28
はたっぴ
124
ナオミとカナコの動機に共鳴して冒頭から共犯者のような気持ちで読み進めた。最後まで突っ走るように一気読み。途中、胸を締め付けられたり肝をつぶすこと数回。こんなにハラハラドキドキする作品は久しぶりだ。職場でミスをして始末書を書くレベルのストレスを受けた。初めは嫌々ながらの2人も犯罪者として能動的にスイッチが入る瞬間があり、心の道程も手に取るようだった。終盤のカナコの強さは母性本能。そしてナオミの海ほど深い情がなければこの物語は始まらなかった。登場する女性達のしたたかさ、逞しさを感じる1冊。おかげで寝不足だ。2017/05/25
dr2006
104
表裏、善悪、男女、親友、そしてナオミとカナコ。追いつめられた人間が侵すリアルな犯罪、ここが法治国家だとわかっていても、捕まって欲しくないと正義の彼女たちを応援したくなってしまう。専業主婦カナコは夫のDVに苦しむ。親友のナオミは百貨店の外商でキャリアを積んでいた。痣を作っても逃げ場が無いからと我慢するカナコに、ナオミは「二人で旦那を殺そうか」と持ち掛ける。そこからが本作の読み所、捻りは無いがドラマチックに展開する。万引き事件の顛末でナオミの顧客になった池袋チャイナタウンの華僑の良俗が斬新で面白かった。2020/01/04