内容説明
今日は15年前に亡くなった横山家の長男の命日。いい歳をして、現在失業中の次男・良多は、久々の帰郷に気が重い。家長としての威厳にこだわり続ける父、得意料理で皆をもてなすも、未だ息子の死を受け入れられない母、自由きままな姉とその一家。老いた両親の家に久し振りに笑い声が響くが、それぞれが家族には言えない小さな後悔を抱いていた。
著者等紹介
是枝裕和[コレエダヒロカズ]
1962年東京都生まれ。早稲田大学卒業後、テレビマンユニオンに参加。初監督作品は「幻の光」。「誰も知らない」で第五七回カンヌ国際映画祭最優秀男優賞、「歩いても歩いても」で第五一回ブルーリボン賞監督賞、「そして父になる」で第六六回カンヌ国際映画祭コンペティション部門審査員賞、「海街diary」で第三九回日本アカデミー賞最優秀作品賞など多数の賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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しいたけ
71
連れ子のいる嫁を初めてつれて、兄の命日に実家の両親のもとに帰る。その一泊の家族のやりとりに、兄がまだ生きていた昔のこと、兄が死んでからの日々、のちに父が死に母が死んでいく現在の想いを織り交ぜて語られる。情景の描かれ方が細かく綺麗で、当然なのだが映像として浮かんでくる。不器用なお父さんもいいが、滑稽で毒も持つお母さんが、それでも嫌いだとは思えない存在になっていて素晴らしい。「父と母を失って、僕はもう誰かの息子ではなくなった」「失ったものは失ったままだ」親を失っても、ちょっぴり酸っぱい想い出が生き生きと残る。2016/05/25
おさむ
48
亡くなった兄の命日に実家に集まった家族らの心情劇。どの家族にもある其々の微妙な感情のわだかまりやすれ違いを描く巧さが是枝節です。映画は老夫婦を演じた樹木希林さんと原田芳雄さんの演技が素晴らしかったなあ。賢兄の幻影に苦しむ弟といえば、古いですが米映画「普通の人々」。読みながら、思わず思い出してしまいました。2016/07/24
baba
30
優秀な兄と比べられて父との確執、そんな兄が亡くなった事が認められない母。それぞれの考え方が違うという事が認められず、想いが相手に伝わらない歯痒さなどが久し振りに兄の命日で集まったある日の一日の出来事、過去を振り返りこれから起こる父、母との分かれを通して語られる。違って当たり前を思い迷い、いつまでも悔やむ主人公の屈折した考え方は読んでいて疲れた。2016/06/15
佳乃
25
「人生はいつも、ちょっとだけ間に合わない」・・・うん、そうだね、いつも気づくのが遅くなるのですよ。遅すぎて自分を責めるのですよ。2018/01/29
大陸
23
15年前に亡くなった長男の命日に集まる家族を描く。母の息子を失って15年経ってもなお、辛く悲しい様が伝わってきて心が病んだ。墓参りに出かけた際に見かけた蝶を長男だと言う母にやるせない気持ちにもなった。でも、是枝作品を読むのを止められない。「人生はいつもちょっとだけ間に合わない。」私もいつもそうなってしまう。後悔ないようには、なかなかできない。だから、間に合わなかったことより間に合ったことを見つけたい。2020/03/06