内容説明
京都下鴨。老舗料亭「賀茂の家」の四姉妹には美しく悲しい秘密があった。不倫でしか男を愛せない長女、夫の性欲を憎む次女、姉を軽蔑する三女、父親の違う四女…。騙し合い、嫉み合い、薄氷の上で均衡を保つ四人の女。しかし―「お義兄さんやから、寝たんやで」。その一言が偽りの家族を破壊する。嘘をついているのは妹か、罠を仕掛けたのは姉なのか。
著者等紹介
花房観音[ハナブサカンノン]
京都女子大学中退。2010年「花祀り」で第一回団鬼六賞大賞を受賞しデビュー(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
えりこんぐ
74
初・花房観音さん。京都の大きなお屋敷に生まれ育った四姉妹は、大人になっても囚われ続けている。暑い夏にネットリした話を読んでしまった? 表面上は仲良く暮らす姉妹。家出をした父の企みを知った後の反応を見てみたかった。それにしても、いつまでも幼女の様だった母・四季子がとてもおぞましい。悪意がないのは怖い。2018/08/07
ワニニ
68
新緑の5月だというのに、風邪でずっと具合悪い為、アゲようとチョイス。が、官能描写少な目(笑)京都の歴史と美しさ、閉鎖的でプライド高い雰囲気、京女の如何にもな描写が、没落旧家と四姉妹の物語を盛り上げる。そして、姉妹それぞれの心の内と外が子細に濃厚に書かれ、面白い。長女を評した不倫相手の言葉に、同じく長女の私は胸を捕まれた。同時に、同じような役割の次女とその夫にも、時折ぐっとなる。ぞくぞくするような昂ぶりは薄いが、読書欲が出て来たぞ!家って怖い。でも、偽りの世界は、案外心地良い。皆、その後どうなったのだろう?2016/05/10
りゅう☆
54
女がいる男しか愛せないが優秀な長女春樹。家庭を築き離れで暮らす堅実な次女美夏。30過ぎても結婚に焦る様子なく世間に守られてきた三女秋乃。東京から京都に戻ってきた自由奔放な四女冬香。箱入りお嬢様がそのまま大人になった亡母とある男とのセックスを見てしまった幼き頃の秋乃。そして生まれた子は…。4姉妹には帰る家がある。だが嘘偽りが蠢く。家を出た父の決断とは?観音さんの描く静謐な京都に性が渦巻く。美夏の夫と体の関係を持った冬香。嘘偽りを正す森と言われる糺の森で恋人に真実の愛を誓うはずなのに嘘があぶり出されたから…。2025/03/22
らすかる
44
面白かった!! 京都、老舗料亭の美しい四姉妹。いつまでも若く美しい母、優しい父。全てが偽りで全てが虚構で全てが薄っぺらいまがいもので。女の業にもがき苦しむ四姉妹と母、その業に翻弄される男たち。今回の花房さんはエロがほとんどなく、そのかわり心の奥底に響くものがある。四姉妹は女の象徴だ。このものがたりでは男も女も皆自分のことしか考えてない。そこがまたリアル。しっとりじっとりした大人の連作短編集でした。2020/03/14
ほかほか
37
京都の老舗料亭の四姉妹はお嬢様であるが故の悩みや秘密を抱えている。亡き母親は生粋の天然お嬢様育ち。そのズレた母親に育てられた四姉妹はそれぞれ男性へ求める物も価値観も違う。性的描写はそれほどなく、名前の区別がわかりやすいので、とても読みやすかった。私の身近にいる四姉妹(義母)とはかけ離れた世界のお話なので、重ならずに済んで良かった(笑)2017/12/16