内容説明
何百年もの間、ベンガル地方で歌い継がれ、今日も誰かが口すざむバウルの歌。宗教なのか、哲学なのか、それとも??譜面にも残されていないその歌を追いかけて、バングラデシュの喧噪に紛れ込んだ。音色に導かれるかのように聖者廟、聖地、祭、ガンジス河を転々とした先に見つけたものとは。12日間の彷徨の記録。第33回新田次郎文学賞受賞作。
目次
第1章 はじまりの糸
第2章 バラバラの船と映画監督
第3章 聖地行きの列車
第4章 二人のグル
第5章 タゴールとラロン、自由への闘争
第6章 メラという静かな狂乱
第7章 「知らない鳥」の秘密
最終章 ガンジスの祭宴
著者等紹介
川内有緒[カワウチアリオ]
東京都出身。日本大学藝術学部卒、ジョージタウン大学にて修士号を取得。コンサルティング会社やシンクタンクに勤務し、中南米地域の研究を行う。2004年に渡仏し国連機関に五年半勤務(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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pino
132
バウルの人々の存在を初めて知った。バウルとは何のカーストにも属さず村から村へ旅する吟遊詩人で、バウルの歌はユネスコ無形遺産に登録されているという。著者はその歌を追い求め、バングラデシュへ旅立ち、出会うグルたちへ疑問を投げかける。バウルの修行とは?哲学とは?歌に込められた思いとは?「自分のココロを探れ。自分の中にある聖なる場所を探し求めよ」親しみやすい文章に助けられ、著者と一緒にバウルのカケラをつかんだ気がする。またバングラデシュの人々の和やかな性格や独立宣言までの経緯も知ることができ、とても勉強になった。2020/03/25
seacalf
65
読むとバングラデシュというよく知らないアジア国に羨望の気持ちが込み上げてくる。人口過密国にして貧困層が多く、首都ダッカは排気ガスだらけ、そんな国にも関わらずだ。現代の吟遊詩人ともいえるバウルに会って、その秘密を解くべく現地に向かう元国連職員の川内有緒さん。旅の道連れは頼もしいカメラマンに非常に興味深い経歴を持つ現地の通訳さん。お二人もなんとも魅力的だ。単なる旅ルポに留まらず、気負いを感じさせない素直な語り口で心の有り様にも問いかけてくる。最近読んで良かった本を聞かれたら、迷わずこの作品をお勧めしたい。2021/04/15
おさむ
33
川内さんの取材力と文章力が光る良作です。2週間のバングラデシュへの旅で、伝説のバウルを訪ねるノンフィクション。著者の心の揺れ動きが盛り込まれ、読者も「自分探し」の旅をしている感覚に陥ります。自分は一体誰なのか?それは、自分の心に聞けばいい。ココロや直感はすでに自分が何者であるかを知っている。(そういえは、そのココロは、なんて言葉もある)人生は目的に向かって行動した結果ではなく、むしろ瞬間、瞬間の気ままな鳥に従った結果なのかもしれない。こんな言葉を読むと、ふとココロが軽くなります。第33回新田次郎文学賞。2019/01/18
アオイトリ
24
川内有緒、連読。かつて、地球の歩き方ファンだった私には最高に面白かった!バウルと呼ばれる吟遊詩人の謎を追う冒険エッセイ。彼らはミュージシャン?哲学者?修行者?カメラマンの親友と現地に飛び込み、通訳者アラムさんと旅した12日。社会的属性を捨て、自分の内なる心を知ること。自分の体を大切に生きること。愛すること。本当に自由な人間らしさって何だろう。数々のグルがその真髄を垣間見せてくれる。やがて著者自身が自分の内面を深めていきます。自己欺瞞の人生から脱出したアリオさん。とても誠実で正直でチャーミング。大好きです。2023/10/15
さくら咲く
15
読み進めるうちに難解なパウルの多様性に少しずつ触れられた気がする。旅を共にした中川さん、現地ガイドのアラムさん。何と素晴らしい相棒達だったろう。行き当たりばったりの旅と言えどもアリオさんらが訪ね行く人から、必然的ににどんどん繋がっていくバウルの人々への道標。たった12日間の出来事とは思えぬ重厚さは奇跡の出逢いとも言えよう。自分の心を聴く。自らの道程-退職など-をこれでいいのだと思えたアリオさん。私も心に向かい合って来た、人生間違っていなかったと読後安堵した。しかしバングラデシュの実状は過酷!私には無理!2022/05/09