内容説明
中学受験失敗から不登校になってしまった光司は、ライターの田村章に連れられ、被災地を回る旅に出た。宮古、陸前高田、釜石、大船渡、仙台、石巻、気仙沼、南三陸、いわき、南相馬、飯舘…。破壊された風景を目にし、絶望せずに前を向く人と出会った光司の心に徐徐に変化が起こる―。被災地への徹底取材により紡がれた渾身のドキュメントノベル。
目次
プロローグ 秋葉原にて
第1章 被災地に/被災地から伝えたいこと
第2章 「希望」とは、なんだろう
第3章 それぞれの人生の転機
第4章 福島からの手紙
第5章 にぎわいを、再び
第6章 日常を取り戻せ
第7章 社長たちの奮闘
第8章 復興ダコの町で
第9章 リレーのバトン
エピローグ 石巻からの手紙
著者等紹介
重松清[シゲマツキヨシ]
1963年岡山県生まれ。早稲田大学教育学部卒。出版社勤務を経て執筆活動に。91年『ビフォア・ラン』でデビュー。99年「ナイフ」で第一四回坪田譲治文学賞、「エイジ」で第一二回山本周五郎賞、2001年「ビタミンF」で第一二四回直木三十五賞、10年「十字架」で第四四回吉川英治文学賞、14年「ゼツメツ少年」で第六八回毎日出版文化賞を受賞。「田村章」はフリーライターとしてのペンネームの一つである(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ヴェネツィア
440
3.11東日本大震災の半年後から重松清が被災地を行脚した記録。小説仕立てになってはいるが、実質的にはルポルタージュである。巡るのは泥で汚れた写真の修復、地区住民だけのためのラジオ、避難区域にとどまり続ける特養、宮古市のホテル等々。そして全体を貫流するキー・ワードは「希望」である。ただし、それは常に「絶望」と隣り合わせにありながら、それでもなおかつそこに生まれる希望を当地にあって人々は模索し続ける。不登校の少年が作家と共に案内役になっているが、そのことはかえってルポルタージュの純度を落とすのではないか。2020/09/10
ナイスネイチャ
202
引きこもり中学生の主人公が震災後の東北を巡り甘ったれた考えを更正させるのかと思いきや、重松さんの深い思いがこもってました。現状回復の意味合いの復旧や復興ではなく希望に満ち溢れる未来に。著者のルポルタージュというべき作品でした。内容としてはあまり関係ないかもしれないけどヒロシマ、ナガサキ、フクシマとカタカナ表記の意味が一番心に刺さりました。2016/10/05
mmts(マミタス)
97
光司は中学生。私立中学校に行く予定だったけど受験当日、インフルエンザになる。仕方なく地元にある公立中学校に進学する。ただ、光司はいじめられっ子になる。イジメを機会に不登校になり引きこもる。一方、田村章はフリーライター。東日本大震災の被災地や被災者を取材する。田村章は「希望の地図」の相棒を探していた。ある日、田村章に誘われた光司は東日本大震災の被災地を巡る旅に出発する。宮城県、岩手県、福島県を一行は旅する。東日本大震災は終わらない。北海道や熊本県、大阪府にエールを送る。幸せになる為に生きるんだ。2018/09/21
rico
90
2011年秋。中学受験に失敗し不登校になった少年が、父の知人のフリーライターとともに被災地をめぐる。正直、この設定要る?と思ったけど、後書きまで読んで腑に落ちた。これが重松さんの誠実さなのだと。立ち上がり、前を向いて歩き始めた人たちの言葉は心を打つ。まさに希望。でも苦い感情がこみ上げる。描かれない多くの絶望のこと。そして10年を経た今もなお、あの日から何も変わっていない場所があること。私たちはそれを知っているはず。だからこそ重松さんは、「物語」という枠を置き、その余白の存在を伝えようとしたのではないかと。2023/03/18
Tanaka
87
もう4年半の出来事にはなるけど、たくさんの人の人生を変えてしまった災害。時間と共に風化していく記憶。風化させちゃダメ2015/10/11