内容説明
高校生の古野まほろは内戦の満州から日本へ逃れるべく、超豪華寝台列車に飛び乗った。華族、軍人、白系ロシア。個性的に過ぎる乗客の中には、謎の大物スパイまでがいるという。その運命とまほろのそれが交錯する時、連続・列車密室殺人の幕が上がる!青春×SF×幻想の要素を徹底的に追求した古野ミステリのベスト作品が入念に改稿され文庫化。
著者等紹介
古野まほろ[フルノマホロ]
東京大学法学部卒。リヨン第三大学法学部第三段階「Droit et Politique de la S´ecurit´e」専攻修士課程修了。2007年、故・宇山日出臣氏が発掘した最後の新人として、有栖川有栖氏の絶賛を受けた『天帝のはしたなき果実』でデビュー(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
W-G
322
豪華絢爛な特急あじあの描写は、独特の文体が活かされていて好き。反面、スパイ要素はなくても。続けて読むと事件が起こる間隔のテンポの悪さがだんだん気になってはくる。後は読者への挑戦。舞台の幕間という設定も好きだし、手がかりも提示されているが、解決編の推理合戦ではじめて明かされる否定材料も多く、これはどうなんだろう。偽説の否定材料も整い切った状態での挑戦でなければ、作者の匙加減一つでいくらでも覆していけるのでは?という後期クイーン問題的な疑問も感じ。もう少しじっくり読まないと具体的にどこがどうとは言えないが…。2017/05/13
セウテス
57
天帝シリーズ第2弾。今回は舞台を学園から、オリエント急行の様な豪華列車に変更。前作よりも空間範囲が狭められて、多少理解しやすくなったと思う。ただし相変わらず高校生なのに、30歳位の会話にしか聞こえないキャラは納得出来ない。物語は、車内でバラバラ殺人が発生する。特徴としては、まほろ達は使者と呼ばれる正体不明のスパイから、例の品を受け取る手筈である事により、殺人とスパイの関連を考えた謎が展開される事だ。謎や考察すべき問題を箇条書きしており、本格として推理を的確に楽しめて良いと思う、しかし語り手と相性合わない。2017/12/26
ヒロユキ
53
圧倒的にトリックよりもロジックを地でいく変態小説。もはやまほろの推理、思考過程には狂気すら覚える。そんな推理パートで脳を疲弊させたあとは、このシリーズの終盤お約束展開を安心して眺めるという安定感(笑)時に脳みそフル回転で、時に頭からっぽにして読めるまほろ作品に大満足。2012/07/27
ひめありす@灯れ松明の火
43
切符は捨てた。大好きなお姉さんは先に降りてしまった。けれど僕は列車の中。きな臭い陸を離れて、約束の街へ向かって走る列車。十二宮を頂くその豪華列車は、まるで銀河鉄道の様で。懐かしい旧友と二人、存分に久闊を叙すはずが、天帝は新たな生贄を求めていた。わが身を焦がすさそり座の赤い炎。宇宙の闇よりも深い快楽への耽溺。ブルケガルニ博士の様な謎の使者。ダイアモンドダストが煌めく世界に、サザンクロスに輝く氷の心臓。探偵者達の推理合戦は皮肉を極め、殺人は陰惨を極め。それでも本当のさいわいを、もとめて。列車は走る。君の許へ。2012/06/27
nins
36
「天帝」シリーズ第2弾。なかなか手軽とはいえない600ページを超えるこの厚さ。前作読了で次も読もうという人のみ手にしそうな感じ。ミステリだけではなく、幻想SF要素もあったり独特な世界観。前作の「天帝のはしたなき果実」の内容に触れる個所があるなどの注意書きが挿入されているものの、この内容を楽しむにはやはり前作は読んだ方が◎。舞台は満州から日本への超豪華特別急行列車「あじあ」。後半の登場人物達の推理披露など読み応え満載。最後は大きな超展開。人外の存在、全部持っていく始末。どう転がるか気になるシリーズ。2012/08/06