内容説明
かすみの秘密は、頬をぴしりと打つと涙をこぼす等身大の男の子の人形。学校で嫌なことがあると、彼の頬を打つのだ(「ぽろぽろドール」)。美しい容姿のあきらは事故で顔に酷い火傷を負う。事故前と全く違う人生を送る彼は、醜い恋人と別れた後、昔の恋人によく似た美しい人形に出会う(「僕が人形と眠るまで」)。人形に切ない思いを託す人々の物語。
著者等紹介
豊島ミホ[トシマミホ]
1982年秋田県生まれ。早稲田大学第二文学部卒業。2002年、「青空チェリー」で新潮社「女による女のためのR‐18文学賞」読者賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
匠
110
人形をテーマにした6つの短編小説。子どもの頃に遊んだことがあるという程度の人や、人形を恋人のように愛してしまったり、または愛した人を人形として再現した人など、向き合い方も様々。そして、艶かしく妖艶さを漂わせる雰囲気のものから、少年の身体つきをした球体関節人形、着せ替え人形など、一言に人形と言えどそのスタイルも様々。でも共通しているのは、人形への自己投影なのではないだろうか。6篇の中、個人的には自分の経験と近い「めざめる五月」が特に印象深かったが、「きみのいない夜には」は現実的な怖さが光っていた。2013/10/08
takaC
34
異教徒の本だ!すごく邪悪だ! でもその邪悪さがとても面白かった。お気に入り。2011/03/23
春が来た
27
憧れ、醜さ、嫉妬、依存、後悔。満たされない。それを撫でるように、快楽を求める。出来ることなら、強い罪悪感が伴う快楽。普通の中に秘めた僅かな狂気さ。その湧き出る一部を人形に託す6つの短編集。「君のいない夜には」がすき。2019/04/28
yu
27
人形の呪いといったホラー特集や映画でも何かと恐怖の対象として扱われる人形というものに気味悪い印象を抱く人は多いと思う。確かに綺麗な人形もあるけれど、人の姿形をしているからこそ視線を感じることがあって私は幼い頃からすごく苦手。この本では人形そのものよりも持ち主である人間の不気味さの方が際立っていて興味深かった。人形にひたすら恋い焦がれ依存する人、人形を誰かの代わりに愛でる人、未来永劫 人形になってかわいがられたいといった人形化願望。官能的で恥ずかしくなるような話もあり、人間心理の面白さを感じた。2015/06/26
リッツ
19
人形との出会いを通して描かれる六つの物語。思春期の苛立ちをぶつけ、憧れを投影し、大人への扉を開き、…様々な形で生を彩る。どれもが、もどかしくせつない、独特の匂いを感じた。「サナギのままで」の一途な想いが胸に残った。2013/11/30