内容説明
元弁護士・真鍋に、見知らぬ老人麻生から手紙が届く。「二十億の資産を息子ではなく孫に相続させたい。ただし一円も納税せずに」重態の麻生は余命わずか、息子悠介は百五十億の負債で失踪中、十六歳の孫まゆは朽ちた家に引きこもり、不審人物が跋扈する。そのとき、かつてシベリア抑留者だった麻生に殺人疑惑が浮上した―。謎とスリルの上巻。
著者等紹介
橘玲[タチバナアキラ]
1959年生まれ。作家。早稲田大学卒業。2002年、小説『マネーロンダリング』(幻冬舎文庫)でデビュー。06年、『永遠の旅行者』が第十九回山本周五郎賞候補作となる(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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KAZOO
115
元弁護士のフリーな主人公が、住民票を持たないで様々な国を移動して、依頼人からの依頼を受けていくという話です。面白い設定で、ある老人から孫娘に自分の所有している財産をすべて相続させ、日本国内には一円たりとも税金を払わないようにしてくれという依頼を受けます。その依頼を受けるまでに結構やり取りがあったり、その老人がなぜ税金を払いたくないのかも明らかにされていきます。しかもかなりの相続や資金運用あるいは債権回収などのついての情報がきちんと書かれています。2025/01/03
k5
60
マネーロンダリングシリーズ第三弾。定住地を持たない「永遠の旅行者」として生きる元弁護士のもとに、見知らぬ富豪からやってきた依頼は、「財産をすべて孫娘に遺贈し、一切の税金を払わない」というものだった。前二作でも、説明を興味深く読ませたり、成金のオッサンから海外のバンカーまでリアリティを持って描きわける稀有な筆力がよかったのですが、主人公の思考のバックにニーチェを置いたり、BGMとしてボブマーリィやキングクリムゾンを響かせることで深みが出てます。どことなく村上春樹の臭いがするのは気のせいでしょうか。下巻へ。2020/06/21
まつうら
51
「永遠の旅行者」というタイトルから、納税を免れるノウハウと国際金融のテクニックを駆使した物語を想像すると、この作品の本質を見失ってしまうように思う。この作品は、シベリア抑留から生還した麻生麒一郎の生きざまと、彼のかけがえのない天使を守り、支えようとした人たちの思いが詰まった物語だ。たしかに、税金をまったく納めずに20億円もの資産を孫に相続するというのは難題だ。遺留分請求とか控除額の上限とか、超えなくてはならないハードルは高い。おまけに麒一郎が余命わずかという待ったなしの状況が、手に汗を握らせる。2023/03/14
taka61
35
【kindle本】話題のタックスヘイブンををテーマにした金融小説。ハワイに住む元弁護士真鍋の元に、相続税を納めずに20億の財産を孫娘に相続したいという依頼が。さすがに橘さんの金融知識は豊富で、勉強になります。ストーリー展開も良く楽しめる作品。情景描写が多少くどいかな⁈下巻も続けて読みます。2016/06/26
sas
27
元弁護士のもとに、突然舞い込んだ「20億円の資産を1円の相続税も払わずに息子にではなく孫娘に相続させたい。」という依頼から進んでいく話。ミステリー・サスペンスもあり、豊富な金融情報もあり、シベリア抑留の話もあり、色々な要素が複合していてなかなか面白い。他の作品「マネーロンダリング」の登場人物も出てきてリンクしている面もある。普通の人には全く縁のない世界だが、相続についての法律や税金の話も非常に興味深い。下巻へ。2014/06/28