内容説明
実川は一躍マスコミの寵児となり、母親と一緒に映る幼児の元気な姿が新聞を賑わした。だが喜びも束の間、容態が悪化していく。この手術の成功に定年後のポストがかかった卜部教授は、最悪の結果となった場合、当麻の手術に原因があったと発表しろと実川に言い渡す。折しも幼児の心臓が停止した。果たして、この小さな命を救うことはできるのか。
著者等紹介
大鐘稔彦[オオガネナルヒコ]
1943年愛知県生まれ。京大医学部卒業。早くより癌の告知問題に取り組み「癌患者のゆりかごから墓場まで」をモットーにホスピスを備えた病院を創設、手術の公開など先駆的医療を行う。「エホバの証人」の無輸血手術をはじめ手がけた手術は約六千件。現在は淡路島の診療所で僻地医療に従事する。小説やエッセイなどの著書多数(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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nobby
119
死に向かう者、片や死を覚悟してあがく者、そして死を回避しようと必死に小さな命を救おうとする面々、その交錯する様子を一気に読まされた。当麻と実川、真摯な二人の迎える試練への潔さが救いを生んでいる。その一方で描かれる大学病院お偉方やマスコミの利権や手柄を追うべく浅ましさは鼻につくばかり…タテマエが大切で、新しい試みへ向ける目線はまさに「勝てば官軍、負ければ賊軍」、こんな自国のお国柄で医療の進歩はありえない…本当に目を向けるべきは待ち望む本人や家族の気持ちだろうに…今後の展開とともに注目すべきは台湾の医療だな。2019/05/11
Tsuyoshi
68
シリーズ4巻目。生体肝移植を受けた幼児が拒絶反応や合併症と戦い死に至った一部始終をメインに死亡を失敗と解釈し、掌を返したようなマスコミの反応、メンツや保身にこだわる上層部の内情など執刀医たちにも明らかにされていく展開だった。出る杭は叩かれ失敗に厳しい風潮は未だもって変わらないままの日本。再挑戦しやすい諸外国との温度差を改めて感じさせてくれるものだった。2018/08/11
キムトモ
54
生体肝移植の難しさが良く伝わる展開。サラブレッド議員さんが同じく議員の父さんに生体肝移植をやりました〜ってエピソードを聞いたことがあるんで生体肝移植って脳死患者からの移植より難しくないんでは…って彼らは大人間でしたね… 実川曰く「勝てば官軍、負ければ賊軍」って乳児が生きている時からのマスコミの対応がゲスい… (ノ-_-)ノ~┻━┻それにしても当麻はいつ肝移植術やるんだ〜〜2019/04/22
りずみぃ
44
生体肝移植後の拒絶反応との闘いを軸に話がすすむ。次々に襲うリジェクションの数々。相手は生き物なのだから、100%の正解はない筈なのに、粗を探すマスコミ、移植成功を手土産に出世を目論む上司、同僚の失敗を待つライバル医師。一番は患者の命とそれに向き合う医師や看護師、技師なのに、外野がごちゃごちゃ煩いのはどこの業界でも同じ。身につまされる。アメリカに留学していた時によく言われた言葉がNice try. 失敗しても挑戦した事を褒める文化で飛躍的に発展した移植手術。石橋を叩くのを良しとする日本との違いを感じた。2018/05/02
Hitoshi Mita
32
国内初の脳死間移植。その波紋はいろんなところに広がっていく。初めてそれをしなければ助からない命。それをすることで当麻先生はバッシングをうける。出る杭は打たれるというが、人はこうも情けないものなのかと、考えさせられる。2014/11/26