内容説明
貧困に喘ぐタイの山岳地帯で育ったセンラーは、もはや生きているだけの屍と化していた。実父にわずか八歳で売春宿へ売り渡され、世界中の富裕層の性的玩具となり、涙すら涸れ果てていた…。アジアの最底辺で今、何が起こっているのか。幼児売春。臓器売買。モラルや憐憫を破壊する冷徹な資本主義の現実と人間の飽くなき欲望の恐怖を描く衝撃作。
著者等紹介
梁石日[ヤンソギル]
1936年大阪府生まれ。「血と骨」で第一一回山本周五郎賞を受賞
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感想・レビュー
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ヴェネツィア
437
内容的にはルポルタージュそのものである。では、なぜ梁石日は小説としてこれを書いたのか。おそらく、ノン・フィクションとして世に問うならば、それぞれの事柄にそれ相応の証拠を必要とするだろう。しかし、あくまでもフィクションとして書くならば、推論や想像は自由が保証されるからである。ここに描かれているのは幼児買売春、養子という合法を装った子どもの人身売買、臓器移植のために殺されるアジアの貧困地域の子どもたち。これらの全ては同じ構造を持っているのであり、それは「金」が全てを支配する世界である。2021/10/31
ゆいまある
107
タイにおける児童買春や臓器移植。映画化された際も、ノンフィクションのように扱われたり、あくまでフィクションと言われたりしているが、ある程度は裏付けのある内容なんだろうと思う。事実、小児性愛者がタイに行く話はちょくちょく聞くし、インド映画でも幼い子がよく売られてしまう。貧困がある限り、子供は売られる。闇に葬られる。日本でもほんの100年前は子供が売られた。そしてこのまま貧しくなったらやっぱり売られるのかなと思う。性欲のために子供を傷つける人の気持ちは分からない。目を背けてはいけない現実。やるせない。2022/04/03
chimako
99
幼児性愛に耽る大人のおぞましさと性の道具にされた子どもたちの痛ましさが、これでもかと描かれる。平気で子どもを売る親。その銭で冷蔵庫やテレビを買って悦に入る。親孝行な子どもを持って幸せだと言い切れるその精神は壊れているとしか思えない。恐怖で縛り付け〈調教〉される子どもたち。その子どもを買う白人や日本人。性器にホルモン注射されおもちゃにされた果てに血を噴いて死んだ少年=11歳。買い取った奴らに犯され客を取り続け、挙げ句の果てに臓器を売られる少女=8歳 これは小説であるが全てフィクションだと言い切れるのか。2017/01/06
たきすけ
78
幼児売春・児童売買を主テーマにした本作「闇の子供たち」眼を背けたくなるような性描写と周囲を取り巻く非人道性から始まるこの物語は一体どこまでが真実なのか? 全てが本当ではないにしても半分程はもしかしたら、、と思うと気分が沈む。読んでいて最も辛かったのは生活の為売られた女の子が散々身体を使わされた挙句エイズに感染し、ゴミ山に捨てられ最期に実の父親に燃やされてしまう話。このようなepの氷山の一角から現れる大きな問題提示にどのように向き合うべきか? 考えさせられる一冊です。2016/08/03
高宮朱雀
74
ページを繰りながら、悍ましさに何度も手が止まる。読むのを放棄したくなるほどだったが、無知である事の残酷さに負けたくはなく読了。 撮影するに当たって過去に様々なトラブルが起きており、命の危険さえあったらしいこの作品。手を引いた関係者もいたというし、今回は公開に当たってタイのイメージを著しく貶める内容という理由で待ったが掛かったり、年齢制限を設けたとも聞く。自国に恥じるべき事がないのであれば、寧ろ堂々と公開を認めれば良かった訳で、暗部が透けて見えるような後味の悪さがいつまでも纏わり付く。2019/07/08