内容説明
一九九八年五月三日、雨の富士スピードウェイで「日本一のフェラーリ遣い」と呼ばれた男の人生は大きく変わった。多重クラッシュ事故による死の淵からの生還。失った顔、壮絶な痛み…。恨み、怒りを超え、家族のため、そして自分自身のために挑んだ闘いで見つけた人生の意味―。すべての人に勇気と無限の可能性を与えるノンフィクション。
目次
雨の富士スピードウェイ
七二時間の命
日本一のフェラーリ遣い
凄まじい痛み
戻るべき場所
妻と子どもたち
見えないほうが良かったもの
アマゾンの流れ
僕に巣喰うクルミの殻
新しい誕生日
著者等紹介
太田哲也[オオタテツヤ]
1959年群馬県生まれ。レーシングドライバー。四年連続でル・マン二四時間レースに出場。「日本一のフェラーリ遣い」と呼ばれる。98年、全日本GT選手権で多重事故に巻き込まれ、瀕死の重傷を負う。現在はレース復帰を目指し、新たな戦いに挑む
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
デビっちん
22
フェラーリを操るカーレーサーがレース中の衝突事故で大火傷を負い、その絶望から這いあがる闘病生活を記した自伝です。顔は原形を留めず、右半身に重症を負った肉体からの復帰劇の描写は想像を絶しました。そんなリハビリ生活中にあった痛みを減らす方法は、痛みをコントロールするだけでなく怒りや悲しみなどのネガティブな感情や本を速く読むことなどに応用できる内容でした。こういう本を読んで、最後は上手くいくということがわかると、不幸なイベントが起きても精神を病まずにすむようになりますね。+その痛み、誰が感じているのだろうか?2017/05/09
中年サラリーマン
15
1998年5月3日雨の富士スピードウェイ。フェラーリは衝突爆発し、太田は病院に担ぎこまれる。全身火傷で体を動かすことはできないが本人は復帰する気まんまん。しかし、ある日自分自身を鏡でみて事故で顔がなくなってたことを知り・・・絶望。復帰しようとリハビリの末、漸く歩けるようになった体を使って病院の階段を屋上に向かい、飛び降りようとドアを開けたそこは「鉄格子」。「俺は死ぬこともできないのか・・・」著者がドン底を見、そこから生きる意味を見出す過程を記したドキュメント本。2013/12/23
小木ハム
10
1998年、衝突炎上事故から復帰までの戦いを綴った『日本一のフェラーリ遣い』太田哲也さんの自伝。実体験だからこそ書ける血の滲んだ文章。リハビリ中のあまり知られたくない状態(幼児退行、凶暴化、うつ)も客観的に書かれている。三度熱傷、範囲60%のやけどの記述には戦慄。熱傷浴は失神レベル。傷口に塩どころではない。本当に強い人だと思う。事故後、佑人君(息子さん)と初めて会う場面では号泣した。不安だったろうなぁ。″自分の顔がある・自由に身体が動く″ことに改めて感謝。2018/12/05
Sumiyuki
7
@自分に降りかかる困難に悩んでいる間は、客体としての自分自身を見ている自分がいる。そういう客体としての自分がある分だけ、行動する主体としての自分が損なわれることになる。困難は、自分の足下に転がっている「今、できること」を主体として一つずつ行うことでしか、解決しないのではないか。2017/07/01
sasha
6
全身の大やけど。レーシングドライバーとしての選手生命どころか、生命そのものの危機。再起不能と言われた大事故からの再生の記録は壮絶だ。死のうと考えたこともあった。苛立ちを周囲にぶつけたこともあった。その時々の心情が赤裸々に、正直に綴られている。ご本人の「もう一度生きよう」との決意までも壮絶だが、それを支えた奥様がなんとも素晴らしい。続編も読みたくなった。2015/02/27