内容説明
敗戦後の混乱の中、食俊平は自らの蒲鉾工場を立ち上げ、大成功した。妾も作るが、半年間の闘病生活を強いられ、工場を閉鎖し、高利貸しに転身する。金俊平は容赦ない取り立てでさらに大金を得るが、それは絶頂にして、奈落への疾走の始まりだった…。身体性と神話性の復活を告げ、全選考委員の圧倒的な支持を得た山本周五郎賞受賞作。
著者等紹介
梁石日[ヤンソギル]
1936年大阪府生まれ。主な著書に『夜を賭けて』『Z』『断層海流』(全て幻冬舎文庫)など多数。本書で第11回山本周五郎賞を受賞する。近著に自らの体験をもとにマルチ商法の巧妙なシステムと人間の欲望の本質を暴いた衝撃作『睡魔』(小社刊)がある
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感想・レビュー
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ミカママ
294
一気に読ませる内容ではない。いわゆる在日文学。金俊平...あまりに身勝手な生き方、その生き様、キチガ◯としか表現できない。彼の人生の終焉に、思わず「身から出た錆」と呟いたのは、私だけではあるまい。壮絶な父と息子の物語。2017/09/28
むーちゃん
108
読了。 最後は因果応報。 積もり積もった情念が降りかかる、 家族は大切に。 在日韓国人関連の最高傑作と言ってもいいのではないでしょうか。 読みごたえありました。2021/06/28
みゃーこ
60
民族、時代背景も加味しても「血と骨」遺伝を語る視点でものを見ると考えられないことも考えないわけには行けないという現実を突きつけてくる強烈な金俊平のキャラクターに翻弄され巻き込まれる人間もまた、ただただ「生き延びる」という生理的な動物的最優先課題だけ、その際頼れるのは金と肉体のみであり、すべてを生存のため力と暴力で支配することに成功したが心を蔑にした動物的生き方が崩壊する。肉体だけを武器にした生き延び方の無防備さは良くも悪くもこの作品のメッセージとして衝撃的に脳裏に焼き付き頭から離れない。2015/05/01
Shoji
55
物凄い小説を読み終えた。戦後の大阪。主人公の俊平は酒と暴力と女に明け暮れ、信じられるのは自身の腕力のみ。思い通りにならなければ、家族すら殺める。全てが暴力と現金の世界。戦後、蒲鉾の製造で巨万の富を得る、そして機を見て商売に見切りをつけ、高利貸しに転じてさらにカネを手にする。しかし、絶頂期は続かない。年老いてボロボロになってやがて北朝鮮に渡り死に絶えるのだ。人生とは、家族とは、人間とは、生活とは、考えさせられた。2020/05/21
ポルトン
55
トコトン身勝手に、我儘に生きた男の最後はやはり因果応報としか言えない結末だった… 一切同情の余地のない最後に少しは気が晴れるかとも思ったけどそれすらなかった。実話が元になってるだけにホント救いがない…2018/06/03
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- 小説春日局 角川文庫