内容説明
「君が最もなりたくない人間に、なってもらう」第二次大戦下、“熱狂”“悪魔の楽器”と呼ばれ、ある作戦を不穏な成功に導いたとされる美しきトランペット。あらゆる理不尽が交錯する中、それを隠し持ち逃亡する男にはしかし、ある女性と交わした一つの「約束」があった―。キリシタン迫害から第二次世界大戦、そして現代を貫く大いなる「意志」。中村文学の到達点。
著者等紹介
中村文則［ナカムラフミノリ］
１９７７年愛知県生まれ。福島大学卒業。２００２年『銃』で新潮新人賞を受賞しデビュー。０４年『遮光』で野間文芸新人賞、０５年『土の中の子供』で芥川賞、１０年『掏摸“スリ”』で大江健三郎賞受賞。『掏摸“スリ”』の英訳版が米紙ＷＳＪ（ウォール・ストリート・ジャーナル）の２０１２年年間ベスト１０小説に選ばれる。１４年、日本人で初めて米国でデイビッド・グディス賞を受賞。１６年『私の消滅』でドゥマゴ文学賞を受賞。著書多数（本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです）
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感想・レビュー
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starbro
298
新型コロナウィルス対策購入シリーズ第十二弾、中村 文則は、全作品読んでいる作家です。 https://bookmeter.com/users/512174/bookcases/11074106?sort=book_count&order=desc 著者が、キリシタンの迫害と第二次世界大戦と向き合って、コロナ禍の今に衝撃を与える渾身の作品、今年のBEST20候補となりました。📯📯📯 https://www.gentosha.jp/article/15293/2020/04/22
fwhd8325
151
中村さんの作品を読んでいても、どれだけ理解しているのだろうかと不安になります。それでも、どの作品も読んだ後に身体を通り抜ける感覚がとても好きです。このような表現での歴史は新鮮でした。そして、物語はとても重厚で、相変わらず息苦しく感じることもありますが、中村さんのあとがきにある「共に生きていきましょう」に救われる気持ちになります。2020/09/03
パトラッシュ
149
中村文則は作品に多くを詰め込み過ぎると感じてきたが、今回は過剰が極点に達した。兵士を戦闘に駆り立てた旧軍のトランペットを取材したジャーナリストが一応の主人公だが、楽器を手に入れた彼が謎の男や宗教団体に追われるだけでなく、吹き手の軍楽隊員や先祖の隠れキリシタンの物語まで途中で詳細に描かれる。単行本では何とか理解できるが、新聞連載中の読者は訳が分からなくなったのではないか。また政治の右傾化に対する批判を文学的に咀嚼してではなく生の形で記述するのは、週刊金曜日の記事のようだ。小説の構成力に疑問符をつけてしまう。2020/12/29
ケンイチミズバ
147
日常の様々な自分の思いが書いてある。おこがましくも私が書いた作品かと思うくらいに。言葉が脳のある部分を刺激し紛争地で蛮行が多発する様子が描かれた伊藤計劃の「虐殺器官」を思い起こした。この作品では音だ。伝説の戦場ラッパ、狂ったトランペットが発見される。背水の陣の中、劣勢の日本軍が米軍を倒したフィリピンでの戦いに記録として登場する。その音色は日本兵に狂人的な力を発揮させ戦況を一時逆転させた。封印されたファナティックが右傾化した現代に蘇ることを恐れる主人公、舌足らずな140文字が扇動者となり得る現代への警鐘だ。2020/04/24
のり
131
熱狂のトランペットを巡りリアルとうつつに飲まれ込む「山峰」。異国の地で出会った彼女とは長崎・キリシタン迫害の末裔としてのルーツを共有し惹かれ合う。過酷な第二次世界大戦の中、奏でられた魅惑なトランペットと、取り憑かれ壊れた奏者。彼の手記はとても苦しいものだったが心に染み込む。音もなく忍び寄る男は何者なのか？どこにも逃げ場はない。生き残れるのか…2020/07/28
