内容説明
真の芸術家か、戦国最大のフィクサーか―。「茶の湯」という一大文化を完成させ、天下人・豊臣秀吉の側近くに仕えた千利休。その謎めいた心根と切腹の真相に迫る歴史大河ロマン。
著者等紹介
伊東潤[イトウジュン]
1960年、神奈川県横浜市生まれ。早稲田大学卒業。『国を蹴った男』(講談社)で「第34回吉川英治文学新人賞」を、『巨鯨の海』(光文社)で「第4回山田風太郎賞」と「第1回高校生直木賞」を、『峠越え』(講談社)で「第20回中山義秀文学賞」を、『義烈千秋 天狗党西へ』(新潮社)で「第2回歴史時代作家クラブ賞(作品賞)」を、『黒南風の海―加藤清正「文禄・慶長の役」異聞』(PHP研究所)で「本屋が選ぶ時代小説大賞2011」を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
W-G
371
面白かった。利休は武人ではないので、戦場面は必然少なく、武将の生涯を追う形式の時代小説とは、肌触りに違いがある。二畳半の狭い茶室で繰り広げられる、言葉の裏を読み合うような、息詰まる駆け引きの様子が醍醐味。丿貫や山上宗二といった、他の茶人の価値観との対比が随所で活きており、さらに秀吉流の侘びが持ち込まれることで、物語が一層華やぎ盛り上がる。あまり良く描かれていない秀吉だが、抜きにしては語れない存在感。表裏の関係を活写することには成功しているのではないだろうか。三成の台頭ももう少し焦点あてて絡めて欲しかった。2020/04/13
鉄之助
291
千利休の愛弟子・山上宗二が、秀吉に耳や鼻を削がれたのは、なぜか? 長年モヤモヤしていた謎が、すっきり腑に落ちた。利休の目の前で、宗二が磔刑に処されるそのシーンが、リアルに壮絶に迫ってきた。伊東潤の作り出すドラマに息をのんでしまった。師の利休自身も、秀吉に死を宣告される。何度も助命の機会がありながら、あえて死に臨む。結果、「茶人としての永劫の命」を得た利休。500ページの大作もあっという間に読み切り。心、動かされっぱなしの1冊だった。 伊東潤さん、マジで直木賞を狙いに行ったかな?2020/04/03
starbro
253
伊東 潤は、新作中心に読んでいる作家です。千利休の物語は、何回か読んでいますが、著者ならではの解釈、ここまでの政治力があったということでしょうか?尊師と呼ばせてる当たり、茶の湯教の教祖のような感じでした。千利休ならではの本能寺の変の解釈も興味深かったです。そろそろ本書で直木賞でも良いかも知れません。 https://minowanowa.com/362 伊東 潤の公式サイトは充実しています。 https://itojun.corkagency.com/works/chasei/ 5月は、本書で読了です。2020/05/31
旅するランナー
218
千利休と豊臣秀吉による天下統一への道。世の静謐を導くため、茶道を武器に影の実力者として権力を操る姿が爽快です。現世と心の内の両面であてどない戦いを続ける。茶道の力をここまで描いた作品は初めてでしょう。歴史の裏側を力強く描ききった力作です。ただ、世の静謐という言葉を使い過ぎて、この小説の侘び具合のお茶を濁しちゃってるのが少し残念です。2020/05/06
あさひ@WAKABA NO MIDORI TO...
166
戦国の混乱の世にあって、「茶の湯」を広く文化として昇華させた、商人でもあり茶人でもある千利休の一代記。茶の湯を通じて時代の権力者に取り入り、世の静謐を求めて傀儡師となって操る蜜月関係とその先にあったもの…。権力に溺れていく秀吉の盲目っプリは凄まじく、恐らく綺麗事だけではない利休の俗の思いと、一方で美への探求ということに関してもっと書かれていれば更に良かったのかもしれない。一介の商人とは思えない、むしろ武士よりも武士らしい潔く壮絶な最期へ向けてのカウントダウンは、いやが上にも盛り上がる。2021/03/18