内容説明
空に浮かぶ雲の中に古代から存在してきた微生物。それらが変異し大量発生、周囲の酸素を吸収するようになった。その雲が自重で地面に落下。その現象が起きた地点は急激な酸欠状態になり、ほとんどの生物が死んでいくという惨状が次次と発生。だがその予測不能な事態に、人間は有効な手立てを何も見いだせないでいた。終末感が漂う時代、人々はいかに生きるのかを選び始める。普段どおりの生活を続ける者、新興宗教に救いを求める者、微かな生存に望みを託す者、いっそ鮮やかな死を望む者、そして―。
著者等紹介
山田宗樹[ヤマダムネキ]
1965年愛知県生まれ。98年「直線の死角」で第18回横溝正史ミステリ大賞を受賞。2003年に発表した『嫌われ松子の一生』が映画化、ドラマ化され大ベストセラーになる。13年「百年法」で、第66回日本推理作家協会賞(長編及び連作短編集部門)を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
1 ~ 1件/全1件
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
starbro
285
山田 宗樹は、新作中心に読んでいる作家です。面白く読みましたが、人類滅亡まで200年というの長すぎるのと、信仰宗教、テロ、ノアの方舟というアイテムが、月並みでサプライズがありませんでした。200年も期間があると全人類死亡してしまいます(笑)著者が同い年であることが判明し、親近感が湧きました。2018/11/06
しんたろー
247
すっかりSFが板についた山田さんの新作は見事な物語…グレートエンディングと謳って自滅 or 手を尽くして生き残る…3~4世代に渡るドラマを織り込みながら、スピーディに展開してゆくので全く飽きずに読む手が止まらない。特に後半100ページ程は手に汗握る秀逸なサスペンスでワクワクできた。悪役側に関する伏線が足りなく感じたが、それも重箱の隅をつつくようなものだろう。山田さん作品の多くに共通する「命を考える」というテーマに、今回も共感しつつ「命を繋ぐ」ことの難しさと大切さを思い知らされた気分。『百年法』に次ぐ佳作!2018/12/26
いつでも母さん
230
現代版『ノアの方舟』か?帯には平成版『日本沈没』とある。終末観、あなたはどうすると問われても、AIが選ぶんですから・・そして三世代という長い準備期間が不安を更に掻きたてる。宇宙規模で考えると、いつかそんな事になるかもしれないと漠然とした思いが無いわけじゃない。330年も前に打ち上げられた探査機が地球のどこかに現れているのかもしれない。しかし、皆を煽って鮮やかな死や自縛テロはいただけないなぁ。じゃあ、どうする私?酸欠を想像しながらの読書になったが面白かったです。2018/10/15
Yunemo
166
平成最後に記された壮大なスケールの人類史、とでも表現できるのでしようか。自然環境の激変という発想は、現実的でもあり、身近な出来事の変化がもたらす未来をも予想させられます。ただやはりこの種の滅びの物語はノアの箱舟的な発想が原点であり、それ以上の展開が難しいですね。滅亡を待つ間のそれぞれの個々人の心模様が身に沁みます。希望を持つことに疲れたという表現が、全体を通して負の連鎖に繋がっても行きます。次の段階を生き抜く覚悟って、とてもとてもできない自身がいて。衝撃の平成版「日本沈没」、ちょっと兼ね合いが違うのでは。2018/11/11
モルク
154
各地に発生する赤いコロニー雲の正体は二酸化炭素と細菌であり、それは次第に増殖し200年後には人間は酸欠により滅亡すると予測される3世代に渡る世界。国家による密封施設「シールドポリス」に入れるのはAIが無作為に選んだ人たち、その確率は千人にひとり。そのため選ばれなかった人たちのグレートエンディング思想がはびこり暴動も起き、その上テロと終盤まで目が離せない。ラストも余韻がある。いざ自分がそこにいたら、冷静でいられるか、シールドに行ける人を暖かく送り出せるか…。上下二段400ページ超の作品であったが堪能した。2019/10/07