出版社内容情報
博物館は、生者と死者が交わり境界となる場所。そこには、悲しみが作り出す「嘆きの川(アーケロン)があった――。
将来を見失った男子学生×三途の川で渡し守をする美青年切なく優しい博物館ミステリ
「時には、声をあげて泣くことも必要だ」
大学生の出流(いずる)は、閉館間際の東京国立博物館(トーハク)に立ち寄る。展示物を眺めながら悲しい出来事を忘れようとしていると、突然、どこからか大量の水が湧き上がり、木舟に乗った美青年の渡し守・朧(おぼろ)に助けられる。朧いわく、出流は自分の悲しみが作り出す「嘆きの川」で溺れていたようだ。過去のトラウマを朧に打ち明け希望を取り戻した出流だったが、朧もまた、深い悲しみを秘めていて……。
内容説明
大学生の出流は、閉館間際の東京国立博物館に立ち寄る。展示物を眺めながら、悲しい思い出を忘れようとしていると、どこからか湧き上がった大量の水に飲み込まれてしまう。気を失いかけた出流を助けてくれたのは、美青年の渡し守・朧だった。朧によると、出流は自分の悲しみが作り出す「嘆きの川」で溺れる寸前だったという―。切なく優しい博物館ミステリ。
著者等紹介
蒼月海里[アオツキカイリ]
宮城県仙台市生まれ、千葉県育ち。日本大学理工学部卒業。元書店員(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
★Masako★
71
★★★+将来に不安を抱え悲しい過去を引きずる大学生の東雲出流。閉館間際の東京国立博物館(トーハク)で展示物を眺めていると、突然水が湧き上がり川となって出流を飲み込んでしまう。助けてくれたのは美青年の渡し守・朧。この川は生者の悲しみが作り出す常世と浮き世の境界を流れる「嘆きの川」だという。その後も朧に会うことで前向きになっていく出流。最後に明らかになる朧の正体…ギリシャ神話をモチーフにしたファンタジックな物語。展示物が動き喋るのも楽しい。軽めの文章でサクサク読める。トーハクは好きだがまた行ってみたくなった♪2018/06/10
ami*15
46
読了&レビュー600冊目!東京国立博物館を中心に描かれる幻想的で蒼月さんらしさ全開な作品。博物館が好きな私としては東博をはじめとする上野公園周辺の小ネタに好奇心が高まった。東博は未踏の地なので、行った際はこの本のことを思い出しながら館内を探検してみたい。また本作の個人的お気に入りは広報担当の二階堂さん。出流に明るく振る舞うところが良きキャラだったが、「嘆きの川」で映った彼の本心からは普段の姿からは想像つかない日々の苦しみを感じた。不思議なことばかり起きるこの博物館にまた来館したいです。2019/09/02
よっち
38
将来を見失っていた大学生の出流が、立ち寄った閉館間際の東京国立博物館で湧き上がった大量の水に飲み込まれ、美青年の渡し守・朧と出会う物語。自分の悲しみが作り出す冥界の狭間にある「嘆きの川」で溺れた出流と助けてくれた朧との交流。そしてその流れの中で関わってゆく広報の二階堂や犬の埴輪・ケルベロス、そして自らの記憶を失っていた朧自身のエピソード。著者さんらしい幻想的な世界観に、その出会いを通じて心境が変化してゆく登場人物たちが繊細に描かれていて、読みやすく一冊にすっきりとまった結末はなかなか良かったと思いました。2018/05/08
那由多
34
好きな作家さんなんだけど、何冊も読んでいくと違うロケーションで同じパターンを繰り返しているだけなので、いつか飽きてしまいそう。主要人物二人のシチュエーションも変わらず一緒。もっと冒険してくれても良いのに。編集者が許してくれないのかな?相変わらず面白いが、さらなる進化を待ってます。今作のお気に入りキャラは、ハニワのケルベロスでした。これもシリーズ化されたら、きっと読む。2019/03/04
ぽろん
32
なんとも幻想的な話。埴輪の犬ケンタウロスは、可愛いかったなあ。希望のラストにホッと胸をなでおろした。2018/05/12