内容説明
病院を「サービス業」と捉える佐々井記念病院の常勤内科医・千晶は、押し寄せる患者の診察に追われる日々を送っていた。そんな千晶の前に、執拗に嫌がらせを繰り返す患者・座間が現れた。病める人の気持ちに寄り添いたいと思う一方、座間をはじめ様々な患者たちのクレームに疲弊していく千晶の心の拠り所は先輩医師の陽子。しかし彼女は、大きな医療訴訟を抱えていた。失敗しようと思って医療行為をする医師はひとりもいない。なのに、患者と分かり合うことはこんなにも難しいのか―。現役医師が医療に携わる人々の苦悩と喜びを綴る、感涙長篇。
著者等紹介
南杏子[ミナミキョウコ]
1961年徳島県生まれ。日本女子大学卒。出版社勤務を経て、東海大学医学部に学士編入。卒業後、都内の大学病院老年内科などで勤務したのち、スイスへ転居。スイス医療福祉互助会顧問医などを務める。帰国後、都内の終末期医療専門病院に内科医として勤務。2016年『サイレント・ブレス』でデビュー(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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starbro
315
読メで評判が良さそうなので、読みました。南杏子、初読です。現役の医師が書いているので、リアリティがあり、読んでいて辛くなりました。日本医師会や一部の特権階級的な医師を除くと、現場の医師達は、まさにブラックな環境にあるんだと思います。ランチを食べる時間もない。私は病院でクレームをつけたことはありませんが、クレーマーは増殖しているんでしょうね。2018/04/29
青乃108号
206
タイトルからして患者を思いやる医師の姿を描いたハートウォーミングな物語かと思っていたが、全然外れた。外来診察に突然現れたクレーマーの執拗な攻撃に恐怖する医師。病院で毎日行われる患者様第一主義教育研修会議。大病院の医師も大変だと思ったが、俺の読みたかったのはこんな話じゃなかったんだよ。2022/10/31
シナモン
172
図書館本。テレビドラマ化。南杏子さん初読みです。患者様によるクレームの嵐、医療訴訟、過酷な勤務、内科医でもある著者のリアルな視点でデパート化した病院の内部とそこに勤務する若い女性医師の葛藤と成長を描く。余りにも酷い実情に読んでて辛くなった。後半サスペンス要素も加わって作品としての面白さは加速したが、その裏側の切なさにやりきれない思いが。最後の最後、希望を抱ける展開にほっとした。「失敗しようと思って医療行為をする医師などひとりもいない」今度お世話になる時には心をこめてありがとうございます。と言おう。2020/02/14
モルク
158
川崎の病院勤務の女医。一時代前は「お医者様」今や「患者様」の時代となり、モンスターペイシェントへの対応に苦労する。外来診療、入院患者への対応、保険などの書類の山、そして夜勤と一日中おわれ余裕がない。確かに入院すると朝早くから主治医が顔をだし夜遅くまで勤務している。家に帰って休む時間があるのかとこちらが心配するほどの激務である。大病院には経営という大前提があり、患者との板挟みになりやすい医者の立場も辛い。主人公の父のように田舎でまわりととけ込んだ診療所医師生活というのも一理ある。2018/11/10
とろとろ
119
以前に読んだ題名は「サイレント・ブレス」。今回の題名は、要するに文字通りの「拝啓、患者様」という意味かしらね。大学の医局員と民間の臨床医の勤務形態や患者に対する考え方の違いなどがメインのようだけれど、以前の話も大学から在地の終末期医療に移った話だったし、自分の母親がどうにか成るのも一緒だったし、患者が良い方向に向かって欲しいという願いは変わらないのなら何かもう少し変化が欲しいところ…かしら。小説の中で医者はたいへんな過重労働だと表現しているが、現実世界では二足の草鞋で小説書くような時間があるんだな。2018/06/10