内容説明
その街では、死者も生き返る。現実を夢で見る「夢見」。そして屍人を自在に動かす「屍人使い」。二つの能力を私は持っている。吉本ばなながついに描いた渾身の哲学ホラー小説。書き下ろし長編。
著者等紹介
吉本ばなな[ヨシモトバナナ]
1964年東京都生まれ。日本大学藝術学部文芸学科卒業。87年『キッチン』で第6回海燕新人文学賞を受賞しデビュー。89年『キッチン』『うたかた/サンクチュアリ』で第39回芸術選奨文部大臣新人賞、同年『TUGUMI』で第2回山本周五郎賞、95年『アムリタ』で第5回紫式部文学賞、2000年『不倫と南米』で第10回ドゥマゴ文学賞を受賞。著作は30か国以上で翻訳出版されており、海外での受賞も多数(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ヴェネツィア
467
実に久しぶりの吉本ばなな。本書は彼女の初めての(?)ファンタジー。「あとがき」によれば、これまで30年書いてきて、ここからは事務所を離れ一人での再出発であるらしい。小説作法としては基本的にはこれまでと大きく違う点はないように思われる。たしかに小説世界の構築は随分と違うように見えはするのだが。本書はシリーズ第1巻で、まだまだ序章の趣きではあるが、思いのままにばなな世界を展開してほしいと願う。ただ、気になるのは語りが通俗的に過ぎるかと思われるところ。もともとこの人のタッチは通俗とのあわいにあったのだけれど。2022/01/23
starbro
247
吉本ばななは、新作中心に読んでいる作家です。表紙に魅かれて読み始め、冒頭の戸川純からして行き成りやられました。著者は哲学ホラーと表現していますが、ファンタジーに近い内容です。今後どのように展開して行くのか、全何巻になるのか全貌は全く見えませんが、大変楽しみなシリーズです。引退を仄めかした著者のあとがきも気になりますが・・・10月は本書で読了です。2017/10/31
おしゃべりメガネ
223
相変わらず独特な世界観は健在で、他を寄せ付けず圧巻です。ファンタジーっぽいモノは多数書かれていますが、ここまでガッチリとファンタジーしてる作品はあまりないかもしれません。フツーの作家さん、作品だとワケがわからずモヤモヤしてしまうのでしょうが、やっぱりばななさんは流石で、独り言のようにぶつぶつ続く作風にもまったく飽きがこないのが不思議です。作者さん本人もあとがきに書いてましたが、ファンタジーよりは'哲学ホラー'な本作、誰も真似できない新な境地をむかえてる気がします。『王国』シリーズを思い出させてくれました。2017/11/21
ゆのん
98
【吹上奇譚シリーズ1作目】今まで読んだばななさんの作品とは違う感じ。だけど、やっぱりばななさんの作品だなぁと感じる箇所も沢山ある。異世界人や、超能力のようなものが登場するのに、特別ではない、どこにでも存在していそう、もっと言えば自分の中にも似た所があると感じた。今までのばななさんの作品からするとかなり突飛な感じがするが、普通の事のように書かれているのはばななさんだから出来る事なんだろう。こころが静かに、自然な感じになり余分な力がスーッと抜けていくよう。1542019/05/10
mocha
98
好きなもの・好きな人など、ばななさんを形造っている諸々をパッチワークのように散りばめた作品に思えた。ストーリーはファンタジーだけど、心の有り様が物事をどれほど変えるかに気づかされる「哲学ホラー」。ミミズが土壌を変えるように、小さな善意や清廉さが積もり積もって町の空気をも変えてゆく。心を開けば情報が流れ込んでくる。この町で次はどんな事が起きるのだろう?「どんぶり」早く読みたい。2018/02/05