内容説明
自ら産んだ子を自らの手で「取り替え」た、繭子。常に発覚に怯え、うまくいかない育児に悩みながらも、息子・航太への愛情が深まる。一方、郁絵は「取り違えられた」子と知らず、保育士として働きながら、息子・璃空を愛情深く育ててきた。それぞれの子が4歳を過ぎたころ、「取り違え」が発覚。元に戻すことを拒む郁絵、沈黙を続ける繭子、そして一心に「母」を慕う幼子たちの行方は…。切なすぎる「事件」の慟哭の結末。渾身の書き下ろし!
著者等紹介
芦沢央[アシザワヨウ]
1984年東京生まれ。千葉大学文学部卒業。2012年「罪の余白」で第3回野性時代フロンティア文学賞を受賞しデビュー(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
Yunemo
306
何だか、空虚感だけが残されて。二人の母親の葛藤、前半の繭子の気持ちは当たり前だけど、その焦り、葛藤の様が痛いぐらいにびしびしと伝わってきて。後半の取り違えを知った郁絵の気持ちも。でも、素直に同情したり怒ったりできないもどかしさ、表現し辛さばかりが募って。確かに、男の立場、父親の立場、孫を持つ立場、それぞれに違うし、妻から見た感覚も違うのでしょうが。後半の繭子の心情はいかばかりか、繭子の母親の存在は、何てことを勝手に思い浮かべて。プロローグとエピローグが何を語るのでしょうね。深い余韻ばかりが残されたままに。2017/04/23
のり
228
冒頭から何で?何でと?自答するが…初めて子の親になるには少なからず不安はつきものだろう。無事に育てられるか?子供の側にいる時が長いのは大方母親だろう。産まれる前の不安と出産後ではまた違うと思うが「繭子」のとった行動は決して理解出来ないのと、許しがたい行動だ。何度も引き返すチャンスはあったのに…突然に真実を突きつけられた者の苦悩ははかりしれない。四歳児の記憶がどの位蓄積されているものなのか?二人の子供の幸せを願うと共に、「旭」が失った大きさに悲しみを感じる。2017/11/11
mincharos
215
自分が子供を産むまでは産んだその日から自動的に母になると思ってたけど、産んでみて分かったのは、お腹の中に10ヶ月いたからとか血が繋がってるからというわけじゃなくて、一日一日その子と綿密な時間を過ごしていくうちにだんだんと母と子になるということ。血が繋がっていないからといって、そうやって自分の全てをかけて育てた子を手放すことなんてできない。母から離される子供の気持ちを思って涙がこぼれた。「そして父になる」を見て「ねじれた絆」も読んだけど、本作でもやっぱり血よりもそれまでの日々を重視したい私がいた。2017/12/20
うっちー
213
取り替えた動機がよくわからなかったです。ベスト回答はありません2017/08/10
だんじろー
205
これは難しい問題だ。ただ間違いなく言えるのは、一番の犠牲者が子供たちだということ。大人の事情で振り回される子供たちが、何とも不憫で堪らない。ラスト直前、航太と郁絵の会話は、あまりの切なさに何度も何度も繰り返し読んだ。二人の視点を並列ではなく、完全に前後半に分けた構成も見事にはまっている。繭子の、「母親」に対する恐怖心と嫌悪(憎悪)感の強烈さも半端ないレベル。2017/05/11