内容説明
範子はいつでも礼儀正しく、一つの間違いも犯さず、また決して罪を許さない。なにより正義を愛していた。和樹は、痴漢から助けてもらった。由美子は、働かない夫を説得してもらった。理穂は、無実の罪を証明してもらった。麗香は、ピンチを救われチャンスを手にした。彼女たちは大いに感謝し、そして、のちに範子を殺した。しかし、死んだはずの範子からパーティへの招待状が届いた。そこで、四人が見たものとは―?
著者等紹介
秋吉理香子[アキヨシリカコ]
兵庫県生まれ。早稲田大学卒業後、ロヨラ・メリマウント大学院にて、映画・テレビ制作修士号を取得。2008年、「雪の花」で第3回Yahoo!JAPAN文学賞を受賞。09年、受賞作を含む短編集『雪の花』にてデビュー(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
W-G
631
カバー画からイヤミス感満載。たぶんこんな話なんだろうな、という予想のど真ん中を行きながら、ちゃんと面白かった。イヤミスというよりはホラーに類する物語。範子の異常さだけでグイグイ引っ張って、ミステリ的な仕掛けは味付け程度。彼女の背景を描かず、超然とした存在にすることで、読者は、その正義の綻びを探そうと考えてしまうように仕向けられ、知らず作品に没入してしまう上手い構成。程度の差はあれ、自分の常識が全く通用しない人と出会ったことは誰でもあると思うので、この気持ち悪さは、多くの人が共感出来るだろう。2018/02/25
風眠
437
「正しいことを言う時は少し控えめにするほうがいい」と何かで読んだ事がある。時間が経てば冷静に受け止められる事も、その時は、やっぱりカチンとしてしまうのが人情だし、正しい事をしたとしても、やっぱりどこか傷ついてしまうのも人情だ。あまりにも正しすぎる事は、時に暴力になり、相手も自分も傷つけてしまう諸刃の刃となってしまう。だから大抵の人は、正しいことを言ったり、したりする時は、相手の立場を考慮した「優しさのフィルター」をかける。正義とは、人を思いやる事が前提にあって成立するもの。自己満足の正義なんてありえない。2017/07/05
Yunemo
375
何だか浅い世界に止まり、深いところまで到達できなかったのでは、との想いに。どうあがいても、次の行動は読めるのに、これでもか、という具合に。周囲への正義の与え方があまりにも固執し過ぎて、息苦しさが募るばかり。法に基づく正義のみをバックにおいての生き方。間違いではなく正しい、全くその通り。でも、道徳、倫理観をどう位置付ければいいの。作中で表現される全裸の正義、正義のヌーディスト、あまりに剝き出しで露骨で。「愛」と「正義」、直接比較対象にはならないけど、ふと考えてみたい、想ってみたい、不思議な感覚が残ったまま。2017/02/19
青乃108号
341
イヤミスとの評が多く恐る恐る読んだけど、これが意外と面白かった。絶対正義を振りかざす女と、彼女に翻弄される4人の友人の物語。女は何しろ正義に反する者はたとえどんな小さな事でも見逃さないので、その徹底ぶりは清々しくさえある。4人は些細な悪事からとことん追い込まれ遂には。彼女ほどではないにしろ、どちらかと言えば彼女よりの俺は、彼女の活躍にぞくぞくする様な快感を覚えながら読んだ。世の中間違った事が多すぎるのだ。彼女が実在してくれたら少しはましな世界になるだろうに。2023/09/23
いつでも母さん
274
『正義』は全ての免罪符なのかーいや~今回も秋吉さんにいや~な思いをさせられてしまったなぁ。これでもかってほど『正義』を盾に生きる範子に正直ヘキヘキした。そしての娘・律子がまた怖い。この連鎖はいつまでも続くのだろうかーあ~ヤダヤダ・・2016/12/07
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