内容説明
誰が少女を殺したのか。数行の三面記事に隠された証言者たちの身勝手な事情。他人事、ではもう済まされない。平凡な日常が壊れる瞬間を描いた慟哭のミステリー。
著者等紹介
天野節子[アマノセツコ]
1946年千葉県生まれ。初めて執筆した小説『氷の華』は2006年自費出版からスタートした後、07年単行本として出版。その後、文庫化され35万部を超えるベストセラーとなる。ドラマ化もされ、60歳の大型新人として注目を浴びた(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
いつでも母さん
175
【完膚なき復讐】交通事故被害者遺族(ここでは母親だけ)が加害者に極刑を下す。なるほどタイトルを巡る心理描写が巧い作品だった。たった一人の我が子を失ったシングルマザーの怨念が凄い。犯人探しはすぐ予想がつくのだが丁寧に丁寧にそれぞれの立ち位置を描いていたので、あのバカ息子以外は私の心も揺れた。誰がこの被害者遺族・岡田優子=羽生志摩子を100%責められるだろうか。勿論間違っている、現実には無理でしょう。しかしこの母の想いとは斯くも濃いのだ。『氷の華』に続いての天野作品。お見事でした。2016/04/06
あすなろ
153
久し振りの天野作品。ミステリーとして、変わらずクオリティ高いと僕は思った。誰にも実証することの出来ない、午後2時の密かな取引。事件と取り巻く事情は正直、複雑ではない。が、これは天野氏の筆の描き方から僕の頭の中の描写をより豊かにしてくれる故の夢中さを生む。ラストの哀情の量感もまたいい。普通と言えば普通の物語なのだが、クオリティ高いという感想でした。2016/05/03
machi☺︎︎゛
143
午後二時に起こった交通事故。その事故の背後に広がる色々な人間関係。亡くなった女の子は明るくて優しい子だった。シングルマザーでこの子を育てていた母親は突然1人になりどうなっていくのか。そんなに捻りもなくサクサク読める感じだけど、証言者たちの身勝手な言い分に苛立ちやるせない気持ちになった。「よその子供が死んだときと、自分の子供が転んだときの気持ちが釣り合う」この言葉が一番怖かった。どれだけ卑劣で批判や同情はしようとも所詮は人ごとなんだなぁって思った。2020/10/21
fwhd8325
143
最初は、単独の物語なのかなと思っていました。それにしては中途半端で食い足りないと思っていたら、ひとつの物語でした。途中で、骨格がはっきりしてしまうにもかかわらず、心理ドラマとして、面白く読みました。ふとした人の弱さや甘えが、こうも連鎖してしまうこと葉、実は恐ろしい。2016/10/19
おたけஐ೨💕🥒🍅レビューはボチボチと…
114
81/100点 初読みの作家さんです。8歳の少女が亡くなった交通事故を巡って起こる殺人事件。犯人や動機は予想通りなので、ミステリー感は薄いように感じました。もう少しひねってあるのかなと思ったのですが…。終盤の展開に少し不満が残りましたが、娘を失くした母親の深い悲しみがよく描かれていて、哀切感の残る作品でした。2016/08/24