出版社内容情報
戦後70年を迎える今年、主人公がついに辿り着いた最後の特効の真実。愛と平和の願う奇跡の物語。
内容説明
苦肉の策か、狂気の沙汰か。太平洋戦争終戦間際、20歳に満たない若年兵が乗る布張りの練習用飛行機に250キロ爆弾を抱かせ、敵艦に体当たりさせる特攻作戦が行われた。その特攻隊員と思しきM・Kから手紙を受け取った深田隆平は、戦後、その消息を尋ねる旅に出る。自らも空襲で許嫁を亡くすという辛い過去をもつ隆平が、やがて辿り着いたM・Kの素性。その素顔とは…。著者自らの実体験をもとに綴る奇跡の邂逅譚。
目次
エメラルドの海
戦時下のヒコーキ作り
羅針儀のメッセージ
デカンショの里
沖縄転属
断末魔
蒼空の彼方へ
暗雲
第三次龍虎隊
出撃
わが尋ね人
著者等紹介
古川薫[フルカワカオル]
1925年山口県下関市生まれ。山口大学卒。山口新聞編集局長を経て、文筆生活に入る。1991年に藤原義江を描いた『漂泊者のアリア』で第104回直木賞受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ミーコ
60
『赤とんぼ』と言う戦闘機の練習機が有った事も、その練習機で 特攻任務に付かされた事も知りませんでした。多くの若者の命が犠牲になった事が辛くて耐え難く思います。この様な過ちを二度と起こしてはならないと思うばかりです。2016/03/24
ゆみねこ
55
人の命を簡単に死地へ追いやった特攻。若い命を散らした皆様に心から哀悼の意を。2015/09/02
馨
39
布と木で出来た練習機の赤トンボ。飛行機乗りを目指す若者の第一歩だったこの機に終戦まで、爆弾を積んで特攻へ行く。スピードも出ずバランスも悪く格好の餌食になったにも関わらず若者たちは散華されていった。彼らが遺した言葉にこめられた深い思いを無下にしないよう、次の世代へ伝えていかないといけないと思います。2015/08/17
keith
37
フィクションとノンフィクションが混ざっていて、多少読みにくさはあったものの、著者のメッセージは確かに伝わってきました。戦争末期、木と布で出来た「赤とんぼ」という名の練習機で特攻という無謀な作戦で犠牲になった多くの若者たち。彼らの無念さはいかばかりだっただろう。彼らの死は無駄死にだったのか、いや、彼らの犠牲の上に今の平和があると思います。そのことを忘れずに考え続けることが、今を生きる私たちに出来ることでしょうか。本作とは関係ないですが、出来れば今年中にでも知覧に行ってみようと思います。2016/02/03
donboo
24
筆者の経験談。飛行機の整備士として心を込めて整備した練習用複葉機(通称:赤とんぼ)に刻んだメッセージ。その機で特攻した兵士からの手紙。「貴方の未来に幸福を。その未来のなかに僕の時間も少しばかり入れてください。」終戦目前、飛行機性能が敵機の1/3程度の飛行機までも戦力として扱われた事実。与謝野晶子の詠が今の平和な日本に住まう私の心に響きます。2015/11/03