内容説明
4歳の春。電電公社の巨大団地を出て初めて幼稚園に向かった。なんの変哲もないこの400mの道行きは、自由を獲得するための冒険の始まりだった。団地以外の生活があること、家族の幸福だけがすべてではないこと、現実は無数の世界のうちの一つでしかないことを母親に手を引かれながら知る。そのことが0円で生きることにこだわり、自分一人で国家をつくるという行動、つまり、僕の現実を生き抜くための方法へと繋がったのだ。誰もが感じる幼少期の戸惑いと違和感。忘れていた自分の中に生きる力は眠っている!幼き記憶に潜れ―。キミの強さ、輝き、自由はすでにそこにある!破天荒にして奔放、狂おしいほどに繊細。路上生活者に教えを乞い、ひとりで国家をつくった男の原点とは―。
目次
1 守衛
2 砂利
3 林
4 動物
5 運動場
6 プール
7 ドブ川
8 車道へ
9 踏切
10 暗号
著者等紹介
坂口恭平[サカグチキョウヘイ]
1978年熊本県生まれ。2001年早稲田大学理工学部建築学科卒業。大学在学中から大規模な現代建築を設計する建築家に疑問を持ち、人が本来生きるための建築とは何かを模索し続ける建築家であり、死なないための方法として表現し続ける作家・絵描き・踊り手・歌い手である。2011年5月には、一人で0円で独立国家を樹立。新政府総理に就任(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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- 評価
退屈しのぎ本棚
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
青春パッカパカス
18
幼い頃の経験が、幾重にも重なって今の自分を作り上げる。本書は自身のアイデンティティの源泉を、幼少時代に過ごした土地・家族・友だちなどの環境に求める。奇才坂口恭平が幼年時代を紐解いていく過程を見せつけられるが、一方読者自身も原風景に潜ることを余儀なくされる。これにより素晴らしい読書体験になる。この本を読まなければ、思い出せなかったような幼い頃の記憶がザクザク溢れ出てきた。 今度何年かぶりに実家に帰るので、私が私たる由縁をじっくり探索してみようと思う。 2013/08/19
イチイ
16
家を出て、母親とともに幼稚園に向かう道行きを回想していると、福岡県糟屋郡新宮町で育った幼い頃の日々の思い出が浮かび上がり、過去の記憶の断片がひとつの構造体を成してゆく、という回想記。電電公社の社宅群やそれを取り巻く鉄条網に囲われた松林と砂浜、富裕な人々の住むセキスイハウスの群れといった記憶の中の情景を書きつつ、そこに現在の思考が重なり合い、物語のようで思想を語っているかのような非常に独特の内容になっている。幼年時代の回想というのもあるが、自分自身への意識が過剰に濃密で、何を読んでいるのかわからなくなった。2020/05/31
RYOyan
9
幻のような少年時代の記憶の中に、その目線から見える世界の豊かさの全てがあった。昭和の匂いがプンプンする手触りの心地良さ。リアルな懐かしさを感じたのは世代の近さ故か!?2015/07/04
権野益荒男
3
時間をなめらかに移動し、幼い頃の記憶に言葉を与え思考を発掘する。記憶、思考、時間のコラージュのような小説。砂利道、鉄条網、松林、砂浜など印象的な映像が心象風景と共に流れていく。思考自体への驚きもあるが、蘇る幼年のリアルな感覚と現在の自分とのギャップから不思議(幻)を漂う感覚になった。2016/02/24
ひとまろ
3
う~ん、そろそろ限界か!?2016/02/08