内容説明
1910年の韓国併合以来、日本の支配下にあった朝鮮。第二次世界大戦中の済州島で暮らす少年・金宗烈の夢は、立派な軍人になって天皇のために命を捧げることだった。母の事を日本語で「お母さん」と呼ぶようになり、剣道では全国大会に出る程の腕前になる。日増しに軍国精神を強めていく宗烈だったが、1945年8月15日、日本は無条件降伏を表明。今まで積み上げて来た知識や考え方が一瞬にして無意味になったことに激しい衝撃を受け、崩れ落ちる宗烈。そして3年後、彼は済州島で勃発した虐殺事件をかわし、日本に密航する…。
著者等紹介
梁石日[ヤンソギル]
1936年大阪府生まれ。「血と骨」で第11回山本周五郎賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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それいゆ
14
わずか250ページ足らずなのに、読むのがしんどくて意欲が湧いてこなかったです。話の中に出てくる生野、鶴橋、今里、日本橋の近くに6年近く住んでいたことがあり、それなりに身近で興味があるはずなのに、なぜかこの作品はドキュメンタリーかノンフィクション小説のような感じで、読者を物語に嫌でも引き込んでやろうという力強さがありませんでした。今の自分が在日文学を避けようとしているのか、北朝鮮の拉致や韓国の竹島実効支配が原因で、梁石日の書く小説を自分が勝手に遠ざけているのか、よく分かりません。2012/04/29
桐一葉
4
いまだ存命である在日と呼ばれる人たちがいるおかげで、第二次世界大戦が終わるまでの日本がどれほど狂っていたかが分かるのでは。と考えた一冊です。今日に至るまで国同士のわだかまり、個人のあいだでも憎しみや怨みがあるという事実は覚えておくべきやと考える。人を虐げ、恐怖で支配した結果なんやから、この先もずっとそんな野蛮なことは繰り返してはいけない。何があっても戦わない国であり続けたい。2022/07/11
へりていじ
4
否が応でも「血と骨」と較べてしまう。荒々しさは影を潜め、生への描写も薄れピンボケ気味。流れ流されの浮き草物語。それでも戦後の在日社会の混迷や連帯は伝わるけど、後味は退廃感のみ。残念。2012/06/19
みんみん
3
最初は歴史の流れもわかって面白かったけど、途中から前に読んだ作品に似ていて面白くなくなった。確か、終わりなき始まりだった気がするけど詩人の会の話はわたしには面白くないのだと気づいた。2012/10/04
ひねもすのたり
3
済州島の事件。在日文学がアイデンティティーを確立するまでの紆余曲折などを興味深く読みましたが、梁石日作品という前提で論じるなら迫力不足の感は否めません。 ただ、我々読者も『血と骨』にこだわりすぎていると、この作家の本質を見失うことになるのではないか?などと思ったりもしました。2012/05/26