内容説明
一九六八年冬。童貞だった僕は、酒を飲ませればだれとでも寝る女という言葉を信じ、艶との出会いを果たした。奔放で危うい性格に戸惑いながらも、人一倍寂しがりやな彼女に惹かれていく。だが二十五年後、過去の秘密を記した日記を遺し、艶は逝った…。自伝的小説の白眉。
著者等紹介
南川泰三[ミナミカワタイゾウ]
作家・脚本家。1943年、大阪生まれ。日本大学芸術学部卒。卒業と同時にNHKのラジオ番組を執筆して放送作家となる(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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kamomi
10
告白的私小説。「片翼だけの天使」を思い出しました。相思相愛が破滅的にも思える話です。堤玲子(筒井澪子)さんの小説も読んでみたくなりました。作者のブログを覗いたら中2の娘と「Another」の話をしてたりして、ちょっと現実に戻りましたが、昭和の話です。*図*2012/03/11
どんぐり
4
艶というアルコール依存と性依存症の女性と結婚した男の私小説風の作品。艶の破天荒な生き方には関心もわかないし、この作家が何を描こうとしているのさえ、最後まで理解が及ばなかった。独りよがりの手記本の類といってよい。これじゃこの作家に読者はついていこうとは思わないだろう。こんな作品を読まされたせいか、車谷長吉の私小説が無性に読みたくなってきた。2012/05/22
rara
4
作者とその妻、艶とのお話。艶さんの激情型破滅思考はベティブルー級なんですが、すごく分かるんですよ。『手に入った瞬間失う事を恐れる』アタシも同じこと考えてたからな〜 自信の無さと極度の寂しがりやが全ての悪循環を招く、分かっていてもなかなか難しいんです。えーえーえー2011/10/04
monken
3
破滅的な妻、艶との出会いと別れ。昭和30〜40年代の妖しくも魅力的な時代背景もあいまって、どんどん話に引き込まれました。まるで小説の中の話のような、自分には縁のない世界です。私は最初の数ページをよんでこういう女性とは無理だな、と思いましたが死ぬまでなんだかんだありつつも添い遂げる泰三さんはやはりすごいと思いました。2011/11/08
Ms.H
3
アルコール依存患者と依存を助長するイネブラーとの関係がつぶさに描かれていた。感情を素直に表現できずに醜態をさらすことで甘え、自己嫌悪に陥ってはまたアルコールで自分をごまかし続ける。その悪循環に巻き込まれ、彼女をコントロールすることを自己実現の手段として選んだ筆者。一番嫌悪する関係だと思うのは、おそらく自分にもそんな艶さん的要素があるからこそなのだろう。2011/09/27