内容説明
渡良瀬川沿いの田舎町で育った僕は、呆けて家族を苦しめる爺ちゃんの死を祈り続けている。夏祭りの夜に、高校の同級生、美少女・きらりも、自分の身体を狙う義父を殺したいほど憎んでいることを知る。祭りの翌日、爺ちゃんをもてあました父が、川の上流にあると噂されている“三途の川の川縁”へ、死の遺いを呼びに行く。すると、逆三角形の大きな頭の小男がやってきて、爺ちゃんの身体は、惨殺された動物の怨霊に乗っ取られていると告げる。同じ頃、きらりの家にも、“その土地”の者が現れた。そしてついに、僕たちが密かに願った忌まわしいことが、現実となる―。家族の死を願ってしまった高校生二人が、愛と喪失を知る、青春ホラーサスペンス。
著者等紹介
吉来駿作[キラシュンサク]
1957年茨城県生まれ。2005年に「キタイ」でホラーサスペンス大賞を受賞し、デビューする(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
林 一歩
23
設定は悪くない。ただ、バッドエンドにした方が面白かった。キングなら間違いなく、バッドエンドにしていただろう。この作家の他の作品を読みたい。2014/06/08
キキハル
12
夏の夜にぴったりのホラー。だがソフトに仕上がっているのは全編通じてユーモアが流れているからだ。胸を突く恐ろしげな場面もあるが、おかしみが和らげている。それは子猫が死んだ朝から始まる。痴呆症の航太の祖父が突然凶暴になり母を襲う。クラスメイトのきらりをストーカーする彼女の義父。川の辺の怪物。裸の魂。死を希う者に寄りつくモノ。橋渡し・・・。終盤近く予想外の展開に「それはひどい」と思ったが、ちゃんと伏線は張られており納得。火星人さんが、若い二人のキューピッド役を務めていたのが微笑ましかった。バランスの良い読み物。2010/08/11
爽
11
どこか恒川光太郎の夜市を髣髴させる物語。自分と同じような年だったので、もしかしたら今見ているもの聞いているものは本物ではないのかも知れないと思ってしまった。自分を持っていない人はその空っぽの心を乗っ取られる。死と生の境目にいる人たちが川の辺なのかもしれない。生きることに執着のない人間は何かに取り憑かれてしまう。自分だったはずなのにいつの間にか違うものになっている。それは恐ろしくて悲しいこと。2010/09/01
本夜見
9
夏の宵、祭りの提灯が連なる。むっ、と草熱れ。盆踊りの会場から聞こえるお囃子。幾重にも人の輪、踊りの輪。人ならぬモノが入り込んでても きっと分からない。生者と死者、死を呼ぶ想いと呼び寄せられる怨霊。怪物は川の辺から来るというが それは本当? 取り憑かれたのは誰? …今の時期にピッタリなホラーでした。2013/07/20
たまご
8
タイトルで,今の時期!と思い.恒川さんに雰囲気似ていますが,こちらのほうがもっと私たち寄り,というか現実的.途中まで主人公にイライラを感じる大人の気持ちが大変よくわかり(^_^;) でもその後はなかなか.最後のほうは想像するのが恐ろしいところもありましたが・・・. 思春期?大人になる直前の不安定さをたとえる表現(蝶と芋虫)がうまいなあ! ラストはさわやかな感じでこれはこれでよかったかな~.航太にとって大人になるための非常にハードな通過儀礼でしたが・・・.2013/09/04