内容説明
大手百貨店の課長職、妻と娘との家族三人暮らし、四十歳をすぎて手に入れた郊外の一軒家。大きな不満はない。ごく一般的な、ささやかな幸せ。しかし、そんなありふれた日常に生じた一点の染みが、突如、絶望の底なし沼となって男を呑み込んでいく。
著者等紹介
福沢徹三[フクザワテツゾウ]
1962年、福岡県生まれ。精細な筆致で描くホラー・怪談小説には定評があり、多彩な作品を精力的に発表する最注目の気鋭である
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ヒロくま
25
会社での軋轢に頭を抱え、家庭でも誰とも相容れる事が出来ない。主人公の中年男性の心も体もなし崩しに病み壊れていく様子はとても苦しい。何もかもあの日の肝試しから始まっていたとはね。内容とは裏腹に読みやすい文章がスルスルと入って来るので読む手を止められず読了。しかし表紙が夢に出てきそうな物凄い迫力、あ、夢は不味いよ。2015/07/27
なっち
22
40代の中年男性が職場でも家庭でもどんどん居場所をなくして転落していく描写がとてもリアル。再就職先の待遇もおそろしい。若かりし日の肝試しがそう繋がるとは……。福澤作品,今年も読みます。2014/01/06
ペトロトキシン
21
ホラー小説なのかと期待して読んでいたのだが、駄目な中年男性がグズグズと人生を転落していく様を読まされ続け、最後の方で(厳密には違うのだろうけど)パラレルワールドっぽいものが出現して、はっきり言って「なんじゃこりゃ?」と中途半端な気分になってしまうのです。一瞬、禁断の夢オチなのかとも思わせるが、ドリームハウスの存在自体がこの家族の家で、その家に過去の自分が訪れて、トイレが開かなかったのは主人公が……と考え込んじゃうと訳解らなくなるので、サラッと読むのがベストだと思います。2017/09/05
うーちゃん
19
大手デパートに勤め、妻と一人娘とともに念願のマイホームに住む夢も叶った。とりわけ大きな不満もなかった四十男が"壊れ"ゆくさまが、とにかくリアルで恐ろしい。一人の人間の転落。ありがちな設定だが、作者に技量があるのだろう、こちらまで息苦しくなるほどの焦燥と不安感。現代的な一つの家庭の崩壊という意味で、「冷たい熱帯魚」を思い出した。一方で、忌み山やドリームハウスといったオカルト要素については、収拾のつけ方がやや半端だが、原因がはっきりしないまま無限地獄に放り込まれるようで、それはそれで怖い。掘り出し物的一冊。2015/07/03
tomomo
13
図書館本 じわじわ怖い… しかし、怖くなるまで英雄の職場の愚痴がひどい笑💦 英雄の性格にも問題があるんじゃないの?? 私ははじめからこの人怪しいと思ってました!! でも、ラストにこう繋がるとは思ってなくて… ラストの仄暗さ、好きだった!2022/04/11