内容説明
死を招く最強のドーピング剤「アンギオン」。イタリア、南フランス、キューバと謎が拡がり罠が待ち受ける。そして、セリエA最終節の死闘。日本人選手冬次は果たして死の罠から生還できるのか―。最新長編小説。
著者等紹介
村上龍[ムラカミリュウ]
1952年長崎県生まれ。76年「限りなく透明に近いブルー」で第75回芥川賞受賞。「コインロッカー・ベイビーズ」で野間文芸新人賞、「村上龍映画小説集」で平林たい子賞、「インザ・ミソスープ」で読売文学賞、「共生虫」で谷崎潤一郎賞を受賞。芥川賞選考委員。また、『トパーズ』『KYOKO』など、映画監督としても活躍
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
K・M
15
村上龍が描くサッカー小説。セリエAメレーニア所属のヤハネトウジは究極のドーピングの噂に不審を抱き友人に調査を依頼するが-。フィクションでありペルージャ在籍時の中田英寿氏がモデル。ジダンはじめ実名で多くの選手が登場し現役時代を知る者には感慨深い。洗練された文章で展開するサッカーは臨場感に溢れユベントス戦での表現力は圧倒的だ。著者本来のエッセンスも惜しみなく盛り込まれ小説とサッカーを絶妙に掛け合わせた点で右に出る書籍はない。本来の目的が曖昧なまま終息し淡々と結末を迎える所も著者らしい作品と言えるのではないか。2021/03/14
星落秋風五丈原
14
死を招く最強のドーピング剤「アンギオン」。イタリア、南フランス、キューバと謎が拡がり罠が待ち受ける。そして、セリエA最終節の死闘。日本人選手冬次は果たして死の罠から生還できるのか—。最新長編小説。 2002/08/26
ルート
10
刊行当時、リアルタイムに読んだ記憶がある。中学3年生だった。ちょうど日韓ワールドカップの年だ。当時は珍しいサッカーの小説だな、くらいの感覚だった。サッカー選手としては、ほぼ引退しているか、ベテランと呼ばれる年になった今読むと、違った印象を持った。セリエAを舞台に、アンギオンというドーピング薬が広まる。投与された選手は、活躍を見せるが、心臓に大きな負担がかかって亡くなってしまう。サッカーというビジネスを、裏側から操作したい存在を想像しながら読むことができた。懐かしの選手たちは、今もなお色褪せない。2023/10/13
那由田 忠
5
プレーヤーの名前が半分覚えられなかったが、サッカーの試合中の様子がリアルに浮かぶようで楽しめました。ジダンの卓越した技が強調されていた。最後、やはり冬次が飲まされていたかどうかぼかしているあたりがうまいと言うべきか。日本や世界経済の動きを変に書き込むとかえってリアルでなくなるので、龍はこうした普通の小説の方が楽しめると思いました。2013/06/02
四椛睡
3
正直に言います。本書は「ドーピング問題を題材にしたサスペンス(或いはミステリー)」ではありません。確かに『死に至るドーピング薬』は登場するけれど、それは物語にピリリと辛味を加えるスパイスみたいなもので。全体的には「サッカーと、著者の海外取材&グルメルポ」って感じ。サッカー小説として読めば、なかなか良質な小説に思える。最後のユヴェントス戦は、かなり引き込まれた。脳内で試合展開される。何より悔しいのは、著者の作品は(エッセイ含め)読んでて滅茶苦茶鼻持ちならないのに、腹立つほど面白いこと。本当に腹立つ。2021/08/26