内容説明
父さんは言う。「汽笛が遠ざかってもその音は昼も夜も一日中鳴りつづけ、おまえの心に語りかけるのさ。」コレッタ・スコット・キング賞を3回受賞しているアンジェラ・ジョンソンの感動的な言葉とロレン・ロングの際立ったイラストが素晴らしい作品を作り上げている。本書は、男の子が大好きな機関車と歴史に残る機関士への憧憬を描き、悲劇的だが、人の気持ちを奮い起こさせる。ヒーローの死とヒーローの登場、夢の消滅と復活を描いているが、それ以上に読者に“希望”を持ち続けていくことの強さが語られている。ゴールデン・カイト賞受賞作。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
とよぽん
43
ミシシッピ州キャントンとテネシー州メンフィスを結ぶイリノイ・セントラル線で、機関車を運転していたジョン・ルーサー・ケーシー・ジョーンズの実話をもとにした絵本。アイルランド人の白人ケーシーは、黒人の助手と一緒に働いていた。沿線の綿花畑で働く黒人の大人や子供たちにとって、ケーシーの機関車と長い汽笛の音は未来への希望の象徴だった。ロレン・ロングの絵が意外なアングルから風景を描いていて、強く印象に残った。アメリカ的な絵本だった。2020/07/14
tokotoko
42
★アメリカ★20世紀始め、綿花畑で長時間労働を課せられていた黒人の人達の中に「ぼく」がいました。そのぼくの憧れは、機関車と、アイルランド人の運転手ケーシーと、その助手の黒人シム・ウェップでした・・・。この本を一言で言い表すには、見開きにもあった「憧憬」という言葉がピッタリです。けれどもし、懐かしさの中に悲しさがあるとき、思い出したくもないって思ったとき。。。それでも何か、大事なことを忘れてない?よーく思い出してごらん!って、気長に待っててくれます。そんな懐の大きな1冊だと思います。2015/04/04
ヒラP@ehon.gohon
20
実話をもとにしたドラマチックな絵本です。 「あこがれ」の意味するものが、ひたすら綿花畑で働き続ける黒人たちが、自由への希望を通り過ぎる蒸気機関車に寄せたものだったとしたら、それを運転するケーシー・ジョーンズを英雄的な存在だと思っていたなら、衝突事故は衝撃的だったのでしょう。 独特なアングルで描かれた蒸気機関車が、とても重厚です。2024/05/22
絵本専門士 おはなし会 芽ぶっく
16
男の子がすきな機関車と歴史に残る機関士、悲劇的ですが大移住時代のヒーローの存在は、黒人たちの気持ちを奮い立たせるものだった。機関士ジョン・ルーサー・ケーシー・ジョーンズが黒人のシム・ウェップを助手としていたことも、ヒーロー化された大きな要因だと思う。読後に心に大きく残ったのは。『希望』を持ち続ける事です。2019/12/30
風里
11
子どもが選んだ絵本だけど、機関車かっこいい~!という絵本ではなかった。 大移住時代に実際に起こった事故。 事故自体は忘れ去られたとしても、ケーシーは黒人たちの希望だっただろう。2018/05/21