出版社内容情報
純文学作家・小林信彦の原点
初期傑作長篇三作を一挙集成
1960年初頭の東京を舞台にマスコミ・文壇で蠢く知的俗物たちの生態を強烈な毒を孕んだカリカチュアで描くデビュー長篇『虚栄の市』、少年期の壮絶な集団疎開体験を基にして書かれた〈戦闘シーンのない戦争文学〉の傑作『冬の神話』、そして著者自ら封印し〈幻の純文学作品〉として長らく入手困難になっていた異色の悪漢小説(ピカレスク・ロマン)『汚れた土地』――純文学作家・小林信彦の原点となる初期長篇三作を貴重な単行本版で集成。
*解題=高崎俊夫 装幀=大久保伸子 装画=小林泰彦
*特別収録 ・『虚栄の市』跋文=山川方夫 文庫版解説=小野二郎
・『汚れた土地』書評=澁澤龍彦
・『冬の神話』文庫版解説=山田智彦
・ 小林信彦『虚栄の市』日記(単行本初収録)
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
阿部義彦
16
小林信彦の60年代にかかれた長編3編を一冊の本に纏めてくれました。国書刊行会刊。どれも長らく入手困難になっており、その内の一つは作者自らの手で封印されてたものも含む。どれも刺激が強すぎて、濃厚な時間を過ごさせてもらった。人間不信の作家小林信彦の面目躍如と言った所か。『虚栄の市』長編デビュー、筒井康隆の「大いなる助走」を思い浮かべた、世にはびこる知的俗物のカリカチュア。『汚れた土地』今のブラック企業に巣食う俗物どもの権力闘争。そして『冬の神話』集団疎開での飢え(蛙、薬、絵の具まで食べる)と虐めの実態。至高2025/09/14