内容説明
怪奇幻想文学の巨匠、アーサー・マッケンの二つの自伝『遠つ世のこと』と『遠近草』を完全収録。自伝文学中有数の傑作と評される、夢見る魂が綴った、小説より夢幻的な自叙伝。幻想文学ファン待望の翻訳がついになる!!
目次
遠つ世のこと
遠近草
著者等紹介
南條竹則[ナンジョウタケノリ]
1958年生れ。作家(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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パトラッシュ
103
マッケンが貧乏生活の傍らに売れない作品を書き続けたのは知っていたが、その内面は意外と豊かであった。故郷ウェールズの様々な人や自然を回想し、自らの想像力を育んだ思い出を綴っていく。その文章はプルーストのように記憶が記憶を呼び、むしろ美しいといえる心象風景が描かれる。通常の自伝に期待される作家が作品を生み出すまでの有様や、有名な「モンスの天使」絡みの話などは一切出てこないが、生活に窮しながら文学に打ち込む姿は感動的ですらある。遅れてきたロマン主義文学者マッケンは、現実との落差に苦しむ自らの姿を文学化したのか。2024/03/18
HANA
63
怪奇小説家の自伝二作品『遠つ世のこと』と『遠近草』を収録した一冊。著者に自伝がある事は知っていたが読む機会は全く無かった為、出版を知った時は小躍りする思いでした。内容はマッケンファンなら充足の内容。編年体の自伝ではなく己の半生に関する随想めいたものであり、それが韜晦に満ちたものであるので一見わかりにくいが、それが著者の小説を思わせてファンには堪らない。あと著者の生涯の一部分、少年時代なら『パンの大神』倫敦時代なら『夢の丘』等の下敷きになっているのがわかるのも嬉しいところ。著者の作品、再読したくなりました。2024/01/02
gibbelin
4
ロンドンで極貧生活を送りながら、文学と故郷ウェールズに思いを寄せる文章がハッとするほど良かった。ついでに、緑茶とパンは合うのかなあ、と思ったり。きらめきと滋味のある随筆といおうか。 なお「あの給仕は〜楽な死に方はしなかっただろうと思う」の一節、この程度の皮肉めいた文章、昔はよく読んだ気がするし、今も週刊誌で見ることはできるだろうが、SNSだと炎上するんだろうなあと余計なことを思ってしまった自分がイヤだ。。。2024/02/01