内容説明
ドイツ・ロマン主義を具現した“元祖”芸術家小説。ホフマン、ルンゲも熱狂した、「ロマン主義の王」ティークがあらゆる時代の若者に贈る愛と青春の物語。ルネサンス期に画家デューラーの若き弟子が北へ南へと美を求めて遍歴修業。ゲーテとノヴァーリスをつなぐ文学史上の古典にして、笑いあり涙ありのエンタメ小説、本邦初訳。
著者等紹介
ティーク,ルートヴィヒ[ティーク,ルートヴィヒ] [Tieck,Ludwig]
1773年ベルリン生まれ。ドイツ・ロマン派を代表する作家・詩人。翻訳や編集活動でも活躍し、文壇の重鎮として存在感を示す。E.T.A.ホフマンなどロマン主義の後継の作家たちに大きな影響をあたえた。1853年に没す
片山耕二郎[カタヤマコウジロウ]
1983年生まれ。東京大学大学院人文社会系研究科修了。博士(文学)。共立女子大学文芸学部専任講師。専門はドイツを中心とした西洋近代文学(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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syaori
75
物語の始まりは画家デューラーの弟子フランツが修業のためイタリアへ旅立つところから。芸術に専心してきた彼が旅の中で市井の人々の営みや多様な価値観・芸術観に触れ、迷いながら進んでゆく姿が描かれます。その友情や恋に彩られた物語に絡めて、多様な自然・精神が存在する世界の美とそれを統合し高める芸術、世界の意味を明かす暗号である自然と芸術の役割などが語られロマン派の香気を吸い込むよう。イタリアの光と色、官能に恍惚としていた彼が、芸術への情熱と覚悟を新たにした時に憧憬の女性が現れる愛と芸術が渾然となった結末も大変好き。2023/09/26
彩菜
28
画家フランツは旅に出ます。憧れの地イタリアへ。そこは永遠の春が花咲く処。彼の春とは無垢な少年時代、物憂い憧れ…遠い黄金色の…一人の少女との出逢い、それに伴う芸術的恍惚と人生の喜ばしい予感。道は遠く自然も芸術も多様な美と色彩で彼を魅了し惑わせます。旅の中、折々に見え隠れするあの金色の影を捕らえる事も出来ません。それでも物語は春の到来の予感に満ちています。彼の師デューラーは言います「良き時間は繰り返しやって来てくれる」…春を告げるナイチンゲールの声、日々甦る光、薔薇の花…何処からか聞こえる歌が告げています→2024/11/04