内容説明
忘れられた明治のメディア王。写真撮影をはじめ印刷、出版、乾板製造など写真を軸とした一連の事業を展開し、写真師としてただ一人、帝室技芸員を拝命。明治から大正という「変容する帝国」を撮影しつづけ、近代日本の視覚文化の形成に大きな影響を与えた、未だ知られざる写真メディアの体現者の生涯と事績を明らかにする画期的大著。
目次
第1章 日本における写真術の習得とアメリカでの写真修行
第2章 「玉潤館」の開設、日蝕そして文化財調査写真の撮影、コロタイプ印刷による美術作品の図版作成
第3章 写真文化振興への貢献―写真雑誌の発刊、写真団体の結成と展覧会の開催
第4章 新たな事業の展開―網目版写真印刷の導入と日清戦争、日露戦争報道
第5章 宮廷建築の撮影と帝室技芸員の拝命
第6章 「光筆画」の制作と東京美術学校臨時写真科の新設
第7章 撮影・印刷業からの撤退、そして写真感光材料事業の失敗
結章
著者等紹介
岡塚章子[オカツカアキコ]
東京都江戸東京博物館都市歴史研究室長・学芸員。博士(芸術学)。東京都写真美術館、東京都庭園美術館を経て現職。展覧会を企画・担当。2012年日本写真協会賞学芸賞、2015年美連協カタログ論文賞優秀論文賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
夾雪
1
明治中期から大正にかけて活躍した写真師の伝記。10代で写真に興味を持った小川は渡米して最新の技術を学んで帰国。東京で写真店を開き、文化財の撮影や浅草凌雲閣での美人写真展の開催、日清・日露戦争での報道写真との関わりなどを経て、当時写真師としてはただ一人、帝室技芸員に選ばれた。晩年は撮影や印刷業から撤退し、写真の感光材料の事業も失敗するなど恵まれなかったが、日本における写真の黎明期を支えた人物としては、その功績は余りあるほど。明治・大正の歴史と写真史の並走がわかりやすかった。2023/05/05