- ホーム
- > 和書
- > 文芸
- > 海外文学
- > その他ヨーロッパ文学
内容説明
地球上の兵器システムをすべて月に移し、軍拡競争をAI任せにした人類であったが、月面での兵器の進化がその後どうなっているのか皆目わからない。地球から送られた偵察機が一台も帰還することなく消息を絶つに至り、泰平ヨンが極秘の偵察に赴くが…レムの最後から二番目の小説にして、“泰平ヨン”シリーズ最終話の待望の邦訳。
著者等紹介
レム,スタニスワフ[レム,スタニスワフ] [Lem,Stanislaw]
1921年、旧ポーランド領ルヴフ(現在ウクライナ領リヴィウ)に生まれる。クラクフのヤギェロン大学で医学を学び、在学中から雑誌に詩や小説を発表し始める。地球外生命体とのコンタクトを描いた三大長篇『エデン』『ソラリス』『インヴィンシブル』のほか、多くのSF作品を発表し、SF作家として高い評価を得る。小説から離れた最晩年も、独自の視点から科学・文明を分析する批評で健筆をふるい、中欧の小都市からめったに外に出ることなく人類と宇宙の未来を考察し続ける「クラクフの賢人」として知られた。2006年に死去
芝田文乃[シバタアヤノ]
1964年、神奈川県生まれ。筑波大学芸術専門学群卒業。ポーランド語翻訳者、写真家、エディトリアル・デザイナー(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
えか
21
ストーリーは大まかに二つに分かれる。ひとつめは我らが泰平ヨンが何者かにより右脳と左脳を断ち切られ、二つの自我に悩まされる。というもの。第一章では右半身と左半身の闘いが、まるでスラップスティック喜劇のように繰り広げられる。文字通りの「分裂症」だ。ふたつめは『砂漠の惑星』やラッカーの『ソフトウェア』三部作のような月で自己進化する機会生命体の話。調査にあたった泰平ヨンの右脳がどうやらその謎の鍵を握っているらしいのだが、はたして如何に…2022/09/15
いきもの
7
兵器の進化と自己同一性をテーマとして書かれた泰平ヨンシリーズ最終作。シリーズとはいえ、ほぼ独立した作品。兵器進化のテーマはレムの他の作品でも共通したアイディアがみられるのと、自己同一性についてはやや掘り下げが足りない感じがしたので、やや期待はずれ。それでも面白いけど。2023/05/10
たか
6
軍拡競争を月に移植してAI任せになった未来。様子の知れない月が地球に攻めてくるのではとの不安が募り泰平ヨンが調査派遣されるが、帰ってきたヨンはカロトミー(脳梁切断)により記憶と人格が分裂してしまっていた。左脳優位のヨンも知り得ない右脳側の月の記憶を巡って諜報戦が繰り広げられる。『航星日誌』に比べると長編らしい重厚さはあるものの、右脳の反逆と和解のドラマ、ヨンを取り巻く怪しい人物たちのドタバタは笑える。兵器進化の描写や、タラントガ教授の洞察、ラストの描写などは本物の予言者ではないかと思ってしまう鋭さ。2022/08/15
huchang
5
スラップスティックという言葉が真っ先に浮かぶ冒頭。脳梁切断手術を知らんうちに受けてたらしい主人公が、右脳と左脳が独立してはたらくために、同一人物なのに全く違う言動・認知的特徴を持ってしまい、しかもそれを「倍増」などと名付けられてるあたり、何度か吹き出しそうになったのだが、そこはレム先生。しだいに連絡が遮断された覇権を争う集団というものは、いったいどないなってしまうんかという人類普遍ともいうべき展開に発展する。今からでも映画になれへんかな…無理かな。2024/08/07
maqiso
5
カロトミーと月のミッションが訳のわからないまま進む中に、兵器やアンドロイドが進化していった話が挟まるの良い。遠隔人を操作する場面は臨場感があって面白い。2022/01/03