内容説明
悪の問いに応答する宗教哲学。人間の「過ちやすさ」を精緻に解き明かす哲学的反省が、象徴的・神話的表現の渉猟によって、悪の経験を表現する豊穣で多彩な諸宗教の象徴言語に接続する。二十世紀フランス哲学の巨人リクールは“解釈学的哲学”の泰斗であるが、初期の“意志の哲学”では、哲学と宗教ははるか近くで呼応していた。リクールの歩みの一大転機となった、新たな宗教哲学への記念碑的著作。『過ちやすき人間』と『悪のシンボリズム』からなる二巻構成本の全訳。
目次
第一冊 『過ちやすき人間』(「悲惨」のパトス的表現と純粋反省;超越論的総合―有限なパースペクティヴ、無限な言葉、純粋想像力;実践的総合―性格、幸福、尊敬;情感的脆さ;結論 過ちやすさの概念)
第二冊 『悪のシンボリズム』(一次的象徴―穢れ・罪・負い目;始まりと終わりの「神話」)
著者等紹介
リクール,ポール[リクール,ポール] [Ricoeur,Paul]
1913‐2005。1913年フランス・ドローム県のヴァランス生まれ。レンヌ大学、パリ・ソルボンヌ大学で哲学を学ぶ。第二次大戦に出征し、ドイツ軍の捕虜となり捕虜収容所に拘留。戦後に取り組んだ「意志の哲学」の第一巻『意志的なものと非意志的なもの』により国家博士号を取得(本書『有限性と罪責性』は第二巻にあたる)。1949年ストラスブール大学助教授、1956年パリ・ソルボンヌ大学教授、1964年に新設のパリ・ナンテール大学に移る。1970年代にはシカゴ大学神学部でも教え、エリアーデなどと交友をもつ。20世紀後半のフランスを代表する哲学者の一人であり、実存哲学、現象学、解釈学、構造主義等々、時代を代表する諸思潮との粘り強い対話を通して独自の哲学的立場を確立した。また、フランスでは少数派の改革派プロテスタントの出自であり、哲学著作と並行して、キリスト教思想や聖書解釈に関する論考も数多く発表してきた
杉村靖彦[スギムラヤスヒコ]
1965年大阪府生まれ。1994年京都大学大学院文学研究科博士課程研究指導認定退学。博士(文学)。京都大学大学院文学研究科教授(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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