愛の日本史―創世神話から現代の寓話まで

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愛の日本史―創世神話から現代の寓話まで

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  • サイズ キク判/ページ数 485p/高さ 23cm
  • 商品コード 9784336062703
  • NDC分類 384.7
  • Cコード C0021

出版社内容情報

古代から現代にわたる歴史・伝説・文学を縦横自在に渉猟し、日本における「愛」を探る。フランス人日本研究家の第一人者が、古代から現代にわたる歴史・伝説・文学を縦横自在に渉猟し、日本における「愛」を探る。フランス本国で大きな話題を呼んだ斬新な日本文化論の待望の邦訳。
古事記から三島由紀夫までを博引旁証し、従来見られなかったユニークな切り口で日本人の恋愛の心像風景を歴史的・文化的に跡付ける。日本に「愛」は存在するのか? 西洋では普遍的概念であるはずの「愛」は、日本ではどんなかたちで可能なのか? それはどう表現されてきたのか? 日本における愛の感情や起源に西洋人として迫り、多方面から鋭利に分析。バルトの『記号の帝国』に比肩する、卓絶した日本文化誌。

日本語版への序文

序説………むなしさの経験としての愛

第一章 永遠の秘密「愛する、なんで〈死ぬ〉って言わないの」

?浦島太郎、阿部定、同じ闘い………「愛は存在しない」 
?高砂………積もった雪のような白髪 
?ほととぎすと死………「われも血を吐く思いかな」
?憶良と「愛」という言葉の歴史………「子供が泣いている。母親もまたきっと」 
?砧を打つ女………「まさに長き夜」
?松虫、待つ虫………「誰も来ない」

第二章 待つことによる欲望「山鳥の尾の垂り尾の長々し夜」

?業平と有常………「愛している」をどう訳すか
?井筒………「私は〈人待つ女〉と呼ばれた」
?天の川の恋人たち………「恋ふる夜ぞ多き!」
?かささぎの渡せる橋………恋人たちの守護天使
?コンドームの物語………「愛には距離が必要だ」
?竹取物語………第三種接近遭遇
?恋の重荷………「恋はなぜこんなに重いのか」

第三章 誰にも心がある「風が竹やぶを吹き抜けるとき……」

?松風………嘆き待つ風 
?葦の節………「私たちを隔てるうつろな空間……」
?吹き渡る風………「それが人生だ」
?葦刈り………善悪の彼岸

第四章 捕まえられない天女「春の朧月の光に浮かぶ若い天女の姿」

?羽衣
?鶴の恩返し………「見るな」のタブー
?定家と式子………夢の浮橋
?おしどり………「ひとり寝ぞ、憂き!」
?李夫人と楊貴妃………「彼女たちが死ねば、われわれも生きてはいない」

第五章 結婚と不純「お願いですから、私を見ないでください」

?豊玉姫、鮫の王女………「その昔、女は怪物であると言われた」
?蛇の眼………あるがままのあなたを愛します?
?玉取姫、見出された魂の王女
?玉取姫、同性愛ヴァージョン………愛の切腹
?巫女と恋の神………いかにして蛇を箱に入れるか
?イザナギとイザナミ………「我をな見給ひそ」
?蛇と織女………恋のおだまきの物語
?スサノオとクシイナダ………蛇に呑みこまれた女

第六章 裏の感情「影のない心など存在しない」

?女狐のすすり泣き………「わが住む森に帰らん」
?八重垣姫と狐火………「この狐火のように私は燃える」
?時姫の選択………父か、それとも恋人か
?雪姫と鼠………「雪の果ては涅槃」

第七章 道行き「日本における愛の起源、それは道行きである」

?小町と深草………「私は煩悩の犬」
?曾根崎心中………「この世の名残……」
?鷺娘………白鳥の死
?蝶の道行き………無の呼びかけ
?柳の霊………「その魂は鶯に変わり……」

第八章 虫と光沢「人格横断的同一性の限りない拡張」

?揚巻………妹よ、もっと近しい関係を結ぼう
?源五兵衛とおまん………娘か、幽霊か、夢か、それとも若衆か
?弱法師、よろめく盲人………「この美は私のうちにあり、私は美のうちにある」 
?玉手御前とオイディプス的犯罪………襞のなかの美 
?鳴神上人と洗濯女………一目惚れ(青天の霹靂) 

第九章 嫉妬のドラマ「私の心は憎しみでいっぱい、怒りの炎に呑みこまれそう」

?鉄輪
?六条?………死ぬほど嫉妬深かった女
?六条?………それほど嫉妬深くなく死んだ女
?六条?………嫉妬し続けて人殺しになった女
?お雪と死女の手………あらゆる悪はからだにとりつく
?累と与右衛門………「もうお前の顔がわからない」
?お岩………「怒髪」 
?清姫と安珍………道成寺にて、情念の火

第十章 忠実な妻たち「主人のために死んでも、少しも後悔しません」

?お園と三勝………「死の餞別」 
?妻の不貞を疑った盲人
?ヤマトタケルとオトタチバナ姫の香………「誰か私を思い出してくれるだろうか」 
?佐用姫、石になった女
?百合若、日本のユリシーズ………「私をずっと私の名で呼んでください」
?切られお富 
?稚児ヶ淵 

第十一章 女郎屋にて「盛りの時しかない花」

?吉野、この世の星………「死も厭わぬ美しさ?」
?高尾太夫の切り取られた首………「地獄にいても、お前となら極楽だ」
?金太夫と大尽………〈いき〉の犠牲者
?助六と揚巻………「彼女の心は売りものではない」
?冥途の飛脚………「私と一緒に逃げよう」
?夕霧と伊左衛門………衣装のためだけの恋文
?小紫と白井権八
?心中天網島………「暁の見果てぬ夢のように」
?照葉、九本指の尼………「?ついたら、指切った」

第十二章 鏡よ、鏡「もっとも華麗な蝶よりも美しい変身が存在する」

?累と与右衛門………「鏡を覗いてはいけない」
?誘拐されて醜くなった美しい貴族の娘の物語
?虫愛ずる姫君………「なにになりたいのか言ってごらん」
?美しい春琴の秘密の恋人………「あなたを失うくらいなら(私の眼を)つぶします」

第十三章 純心な僧と不純な女 いつかは浄土へ参るべき

?和泉と経を唱える者………「我、死の陰の谷を歩むとき」
?江口の遊女と西行法師………「おやめください、おやめください」
?僧と遊女………もっとも穢れているのは誰か
?親鸞と恵信尼………「そなたを極楽に導くために私が光り輝く女性となりましょう」
?安楽、住蓮、女房たち………「はかなくこの世を過ぐしては、いつかは浄土へ参るべき」
?一休………無頼漢、禅、性的放縦

第十四章 夢のごとく「夜に隔てられ」

?面影………死者の影
?源氏とサフランの花(末摘花)………見るべきか見ざるべきか、それが問題だ
?朧月夜………恋、夢のごとく
?空?………「飛び去ってしまった、私の愛しい人」
?第三皇女の悲しい物語………子猫を撫でる

第十五章 有名な恋「霧や露のように消えましょう」

?玉藻前………九尾の女
?祇王、仏、清盛………「我らもつひには仏なり」
?常盤御前………氷雪を越え行く女
?小督局と高倉天皇………「忘れられぬ夢を追って」 
?義経と弁慶………高貴なる敗北 
?静御前の最後の舞い 
?三島と森田………「しかし死、夜、そして血への私の嗜好は……」

第十六章 別れの歌「心打つ死の受容」

?お七………「人生は夢幻」
?采女と鏡ヶ池………美に消える
?求塚………「死んだ星がまだ燃える」
?袈裟御前と盛遠………地獄門 
?浮舟、漂う美女………「私がこの憂き世をさまよっているとき」

第十七章 約束「あなたのことは決して忘れません」

?四十七士………「待ちわびたぞ」
?横笛と滝口………血文字の恋文
?敦盛と熊谷………「夢の世なれば驚きて、捨つれば現なるらん」
?扇を手にした班女………「恋を信じるべきです」


訳者あとがき

アニエス・ジアール[アニエスジアール]
著・文・その他

谷川渥[タニガワアツシ]
翻訳

内容説明

異文化の眼差しがあぶりだす日本の愛の本質。古事記から三島由紀夫まで夥しい文献を渉猟して、日本における“愛”の驚くべき豊饒性を気鋭のフランス人研究家が明らかにする。日本に“愛”は存在するのか?西洋では普遍概念であるはずの“愛”は日本ではどんな形で可能なのか?『記号の帝国』に比肩する画期的な日本文化誌、待望の邦訳。

目次

永遠の秘密「愛する、なんで“死ぬ”って言わないの」
待つことによる欲望「山鳥の尾の垂り尾の長々し夜」
誰にも心がある「風が竹やぶを吹き抜けるとき…」
捕まえられない天女「春の朧月の光に浮かぶ若い天女の姿」
結婚と不純「お願いですから、私を見ないでください」
裏の感情「影のない心など存在しない」
道行き「日本における愛の起源、それは道行きである」
虫と光沢「人格横断的同一性の限りない拡張」
嫉妬のドラマ「私の心は憎しみでいっぱい、怒りの炎に呑みこまれそう」
忠実な妻たち「主人のために死んでも、少しも後悔しません」〔ほか〕

著者等紹介

ジアール,アニエス[ジアール,アニエス] [Giard,Agn`es]
哲学者の父、文学専門家である母のもと、ブルターニュで生まれ、アフリカで育つ。のちにパリに戻り、パリ第三大学で現代文学を学ぶ。90年代から若者向けメディアのジャーナリストとして活躍。また、アニメをはじめとする日本のサブカルチャー全般にも造詣が深く、フランスでは日本アニメの紹介者としても有名

谷川渥[タニガワアツシ]
美学者。東京大学大学院博士課程修了。文学博士(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー

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藤月はな(灯れ松明の火)

57
背表紙を見た時、背中に衝撃が走った。何故なら『エロティック・ジャポン』の作者の本で、その翻訳が『鏡と皮膚』の谷川渥氏が担当していたからだ。『源氏物語』、『古事記』、能、地謡、神話、更には阿部定事件や三島由紀夫の割腹などの事件も紐解き、日本の(西洋に対し、「恋」が重要視される)「愛」の概念とそれを下支えしてきた社会構造について語り尽くす様は圧倒される。しかし、作者が直接、聞いただろう証言が納得いかない。特に230頁の愛人の自身の境遇に対する言や264頁の両家(字は本文の儘)の娘さんの食事の仕方が別世界過ぎた2024/07/27

たまきら

40
フランス人による日本史研究(ジャンルは恋愛)を日本人芸術学者が訳している、というねじれが面白い意欲的な作品です。ただ、あとがきにもありますが大幅に画像を削ったうえに白黒にしてしまったことで、著者が持たせたかったであろう日本不変の「恋愛」感覚が薄まってしまい、読み物になってしまった気がする。もったいないな。2022/10/13

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